ルーラ=有罪軟禁中のクリスチーナ訪問=ミレイ大統領との会談はなしで

メルコスル首脳会議出席のためアルゼンチンを訪問中のルーラ大統領は3日、収賄罪で有罪判決を受け、自宅軟禁中のクリスチーナ・キルチネル元アルゼンチン大統領を訪ね、会談した。ルーラ氏は他国首脳との二国間協議も行ったが、現職のハビエル・ミレイ大統領との会談は日程に含まれておらず、両首脳の間にある外交的な隔たりが改めて浮き彫りとなったと3日付インフォマネーなど(1)(2)(3)(4)が報じた。
今回の会談は、クリスチーナ氏の要請により、アルゼンチン司法当局が特別に面会を許可して実現したもので、首都ブエノスアイレスで開催されたメルコスル首脳会議の公式日程終了後、約50分間にわたって行われた。6月には、同国最高裁がクリスチーナ氏の上訴を棄却した直後、ルーラ氏がSNS上で、「冷静かつ断固とした態度で司法手続きに臨んでいる」と同氏を擁護するメッセージを発信。両者はこの時、電話での意見交換を行っていた。
会談後、クリスチーナ氏はSNSに投稿し、訪問の政治的意義を強調するとともに、アルゼンチン司法とミレイ政権を激しく批判。「私は経済権力に従属する司法によって自宅軟禁下に置かれている」と述べた上で、ルーラ氏の訪問を「連帯の政治的行為」と位置づけた。さらに、自身の境遇をラヴァ・ジャット作戦で一時収監されたが、後に無罪となったルーラ氏と重ね、「彼もまた司法を利用した政治的迫害に苦しんだが、民意によって復権した」と記した。
クリスチーナ氏は、自身や夫の故ネストル・キルチネル政権下の2003〜15年に行った公共事業契約で実業家のラサロ・バエス氏を優遇するなど、組織的な汚職および詐欺的な行政運営を主導したとして有罪判決を受けた。国家への損害は約10億ドルに上るとされるが、本人は一貫して無罪を主張し、「政治的弾圧による判決だ」と反論している。
今回のメルコスル首脳会議では、アルゼンチンからブラジルへの議長国交代が行われ、向こう6カ月間、ルーラ氏が議長を務める。だが、地域統合を掲げる同会議においても、ルーラ氏とミレイ氏の間に直接的な接触はなく、両国間の外交的緊張を浮き彫りにした。
この背景には、2023年のアルゼンチン大統領選挙から続く、ミレイ氏によるルーラ氏および彼が所属する労働者党に対する激しい批判がある。ミレイ氏は就任後もその姿勢を崩しておらず、2024年のブラジル訪問時にはルーラ氏を避け、ボルソナロ前大統領とのみ会談するなど、対立構図は継続している。
こうした中、ルーラ氏がミレイ氏の政治的対立軸に位置するクリスチーナ氏との面会を選択したことは、両政権間のイデオロギー的な断絶を際立たせるものであり、同時に中南米における左派勢力への政治的連帯の姿勢を明確に示すものと受け止められている。
ルーラ氏はこの機会を利用し、同日、パラグアイのサンティアゴ・ペーニャ大統領との会談を行った他、人権活動家でノーベル平和賞受賞者のアドルフォ・ペレス・エスキベル氏や、メルコスルに昨年正式加盟したボリビアのルイス・アルセ大統領とも個別に会談した。
パラグアイとの協議内容は明かされていないが、現在交渉中のイタイプー水力発電所に関する条約「付属書C」の見直しが主な議題とみられる。見直しによってパラグアイが余剰電力の対ブラジル販売義務を免除される可能性があり、ブラジル国内の電力料金への影響も指摘されている。