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BRICS首脳会談=反米的発言や文書相次ぐ=難しい舵取り迫られる議長国=ルーラも「無責任」と米批判

2025年7月10日

6日のルーラ大統領(Tomaz Silva/Agencia Brasil)
6日のルーラ大統領(Tomaz Silva/Agencia Brasil)

 ブラジルは6、7日にリオで開催されたBRICS首脳会議を通じ、多国間主義や国際制度改革、気候・保健・平和への取り組みを掲げ、「グローバルサウスの統合された発言力を引き出す調整役」としての役割を明確にした。他方ブラジルは、米国との関税ブラジル摩擦、中露との関係調整、11カ国への拡大による利害調整といった課題も抱え、これらを繊細に舵取りしながらBRICS勢力の拡大と、11月のCOP30開催に向けて国際的立ち位置を強化しようとしていると報じられている。

 今回のBRICS首脳会談では、中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が隣席しなかった。だが、プーチン氏はリモートで演説を行い、先進国による権威主義的な経済方針を批判し、より公平なバランスのとれた新しい世界秩序のあり方を提案。「BRICSの枠組み内で独立した決済システムを構築すれば外国為替取引はより迅速になる」と脱ドル化を肯定するような発言を行った。(4)
 脱ドル化はトランプ大統領が強く阻止を求めているものでもあり、これを進める場合は制裁をも辞さない発言を兼ねてから繰り返す。トランプ大統領は6日、「BRICSの反米的政策に同調する国に対してはさらに10%の追加関税を課す」との威嚇的な発言までを行った。
 7日付テラサイト記事によれば「ルーラ大統領は課税の脅威を無視し、トランプ大統領に間接的なメッセージを送り、BRICS諸国は『単なる原料供給国』ではないと発言した」と報じた。(2)
 ブラジル外務省としては、事実上の「反アメリカ政策」に傾倒せず、米中双方とのバランスを保ちつつ、国益を守る道を模索する姿勢を保つ方向性だ。ところが首脳会議閉幕後にルーラ氏は記者団の質問に答えて、「他国をデジタル空間で脅すような(トランプ)大統領の振る舞いは、極めて無責任だと思う。敬意というものは、与えるのも受け取るのも気持ちの良いものだ。どの国も、自らの主権を持っている」と名指しこそしないが批判的に語った。(1)
 トランプ米大統領はSNS上でボルソナロ前大統領(自由党)を擁護して「政治的迫害の犠牲になっている」との見解を示し、ルーラ政権との間に摩擦を起こしている最中であることも影響を与えた可能性がある。
 6日に同首脳会議で発表された文書において、イランへの武力攻撃に対しBRICSが正式な形で非難声明を出した。イスラエルと米国の名前は具体的に出さなかったものの「6月13日にイランに対して行われた攻撃を非難する。これは国際法や国連憲章に違反するものであり、中東における危機的状況をエスカレートさせかねないものとして強く懸念する」とした。(3)
 ルーラ大統領は開会の演説でこの問題に触れ、ガザ地区で繰り広げられている攻撃を「ジェノサイド」と表現したほか、北大西洋条約機構(NATO)による軍事費増額にも批判した。とはいえブラジル外務省としては、中露との良好な関係を維持しながらも、同時に米国や欧州との経済関係を重視する姿勢を崩さず、バランス外交の働きを今後も継続していく構えだ。
 今回、BRICSは新たに11カ国に拡大し、世界人口・GDPの40〜50%を占める巨大ブロックとなった。しかし、メンバー増加によって見解の相違や合意形成の困難さも指摘され、ブラジルは議長国として「南の声として世界に橋渡しする調整役」という難しい役割を担っていると報じられている。


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