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南大西洋海底島の領有主張=レアアース埋蔵で注目集まる

2025年7月10日

リオ・グランデ海膨の位置(5日付G1サイトの記事の一部)
リオ・グランデ海膨の位置(5日付G1サイトの記事の一部)

 南大西洋の「リオ・グランデ海膨」と呼ばれる海底の島を自国大陸棚とするため、ブラジルは2018年から国連に領有権を申請中だ。同地域はスペインと同等の面積を有し、レアアースなど戦略的鉱物資源が豊富。熱帯の火山島だった証拠もあり、地質学的連続性を根拠に主張しており、国連専門委員会もその一部を認めた段階で、最終決定を待っていると5日付G1(1)が報じた。
 リオ・グランデ海膨は、リオ・グランデ・ド・スル州沿岸から約1200キロ沖に位置し、水深は最大5千メートル、面積は約50万平方キロに及ぶ。ブラジル南部諸州の陸地に匹敵する規模で、近年の調査でエネルギー転換に不可欠なレアアースを含む鉱物の存在が確認され、国際的注目を集めている。
 国連海洋法条約(CNUDM)は、沿岸国が大陸棚の地質的連続性を証明すれば、排他的経済水域(ZEE)を超えて権利を拡張できると規定。海底の土壌がサンパウロ州内陸部と酷似するとの科学的分析をもとに、ブラジルは自国大陸棚の自然延長と主張。2018年の初の大規模探査では、赤色粘土層や玄武岩の堆積が確認され、過去に熱帯火山島だった痕跡とされた。
 申請を担当するブラジル海軍は、2025年3月に国連大陸棚限界委員会(CLPC)から提出資料の正当性が承認されたと発表。だが、最終認可にはさらに調査や他国との調整が必要で、決定時期は未定のまま。
 この海域は、ブラジルが国際水域での権益拡大を目指す3地域の一つで、「南地域」「赤道縁辺域」と同じくZEE外に位置する。一方、深海鉱物資源の商業化には環境負荷や技術的課題があり、サンパウロ総合大学などの研究機関は、生態系や法的枠組みを含めた調査を進めている。
 鉱山動力省によれば、ブラジルは中国に次ぎ世界第2位のレアアース埋蔵量を有するが、採掘から加工・工業的転換までの技術には課題があり、実際には多くが未加工の一次産品として輸出されている。
 こうした状況を受け、連邦政府は現在、国内での加工技術の確立と外資誘致を強化中だ。ネオジム磁石などの高機能素材の供給網構築を目指す「Mag Brasプロジェクト」や、総額50億レアル規模の官民ファンドを活用した産業支援策が進められている。(2)
 これらの鉱物は風力発電用タービン、電気自動車バッテリー、精密医療機器、宇宙開発、先端兵器など広範な産業に不可欠で「21世紀の石油」とも称される。世界的なレアアース争奪戦は激しさを増し、近年は米国とウクライナの採掘協定のように、地政学的駆け引きの中心資源にもなっている。
 米国は国内需要の約8割を中国からの輸入に依存しており、これからの脱却を目指して他国との連携を強化。一方、中国はレアアースを戦略資産と位置付け、輸出規制や関税を外交カードとして活用。ブラジルの地政学的・資源的立場の重要性は今後さらに高まるとみられ、専門家は「資源を国家戦略と結びつけ、付加価値を国内に取り込む発想が不可欠だ」と指摘する。
 豊富な資源、再生可能エネルギー、地政学的安定性を兼ね備えるブラジルは、世界的なエネルギー転換と技術革新の波に乗る好機を迎えている。だが、資源輸出国にとどまらず、加工・製造までを含むバリューチェーンの構築が急務とされている。


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