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HIV患者名を誤って公表⁉︎=「家族にも秘密」情報が600人分

2025年9月24日

万華鏡2
一般公開されているフェイラ・デ・サンタナ市の官報(Foto: Reprodução/Prefeitura de Feira de Santana)

「まさか自分の名前が病名とともに公にされるなんて」――。北東部バイア州第2の都市フェイラ・デ・サンタナで、HIV陽性者や慢性疾患を抱える患者ら600人以上の医療情報を含む個人情報が、公文書として誤って公開される由々しき事態が発生した。市側は「システムの不具合による誤公開」と釈明しているが、市民には強い不信と怒りが広がっている。22日付G1(1)(2)が報じた。

問題の文書は、同市交通局(SEMOB)が発行した命令書の一部として、20日付の市公式官報に掲載された。市の説明によれば、今回のリストは公共交通機関の無料乗車特典の見直しに伴う手続きの一環として作成されたもので、対象者を把握し、通知するために関係部局との間で情報を共有していた。ところが、本来非公開であるべきそのリストが、誤って一般に公開される形となった。

同文書には、公共交通機関の無料乗車特典の受給者リストとして、HIV陽性者、線維筋痛症や鎌状赤血球貧血の病名と共に患者の実名が記載されていた。掲載から数時間後に削除されたが、公的な場で情報が晒された影響は大きく、SNS上などで広く拡散された痕跡も確認されている。

市はこれを「システムエラーによる誤公開」と説明し、22日には、情報流出の経緯を調査するための内部調査を開始したと発表。調査は、漏洩の原因究明と責任の所在を明らかにすることに加え、同様の事態が再び起こらないよう防止策を講じることが目的。市は調査結果を15日以内に公表するとしている。

G1の取材に応じた被害者女性の一人は、知人から報道を知らされ、急きょ弁護士に連絡し、自身の名前が掲載されている事実を確認した。「これは単なるミスではなく深刻な無責任であり、私たちHIV陽性者が日々直面する偏見や無理解をさらに助長するもの。私たちは日々スティグマ(否定的な烙印)と闘っている。家族にすら感染を明かしていない人もいる中で、実名が公になったことは生活の土台を崩すような暴力だ」と心情を吐露した。

市が公表したリストの中には、本人の承諾なく記載されたとみられる情報も多数含まれており、本人以外の家族や知人に知られてしまうリスクが現実となった。該当女性は「名前を公表されたことは言葉にならないほどの屈辱。精神的な損害であり、名誉の問題だ。多くの人にとって取り返しのつかないことが起きた。私たちは金銭的な支援だけでなく、尊厳の回復を求めている」と語り、集団訴訟も視野に入れていることを明らかにした。

医療的観点から見ればHIV陽性は、今は「死の宣告」ではない。現代の医療においては、適切な治療を受けることで、ウイルスと共存しながら健康的な生活を送ることが可能であり、生活の質も大きく向上している。感染予防のための内服薬として知られるPrEP(プレップ、曝露(または暴露)前予防投与)も広く普及している。

今回の事態を受け、バイア州検察局(MP―BA)も独自に調査手続きを開始すると発表し、地方自治体による個人情報の取り扱いに対する監視強化が求められている。

このようなセンシティブな情報の公開は、ブラジル憲法および一般データ保護法(LGPD)に明確に違反する可能性がある。憲法では、市民の私生活や名誉、個人データの保護が基本的権利として保障されており、LGPDでも、健康に関する情報は特に慎重な扱いが求められる「センシティブデータ」として定められている。

統一医療保健システム(SUS)の運用指針や医師の倫理規定においても、HIV感染者の個人情報は特に厳格に保護されるべきとされており、社会的なスティグマや差別を防ぐ観点からも、強い秘匿性が求められている。

バイア州公選弁護人事務所(DPE―BA)は、公開された情報の削除、被害を受けた市民への法的支援に向けて動き出している。被害者の人格権保護と再発防止を目的に、ネット上に拡散された情報の削除やその他の必要な措置も視野に入れているという。


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