映画『鬼滅の刃』で警察出動?=年齢制限無視し強行入場試み

サンパウロ市東部の映画館で13日(土)、劇場版『鬼滅の刃:無限城編』の上映をめぐり、未成年の子どもを連れた家族が入場を強行したことで場内が混乱し、警察が出動する事態となった。該当作品はブラジル法務省によって「+18(R―18)」に指定されており、映画館側は規定に基づき入場を拒否。だが、母親は、チケット購入時に年齢制限の表示がなかったと主張し、被害届を提出した。現場の映像がSNSで拡散されたことで、対応の妥当性や年齢区分制度の運用をめぐる議論が広がっていると21日付G1(1)が報じた。
事件は、ショッピングモール内の大手シネコン「Cinemark」で発生した。未成年の子どもを連れた母親が、同作品を鑑賞しようと入場したところ、年齢制限により、スタッフから」退室を求められた。だが、この母親を含む複数の家族が指示に従わなかったため、上映開始が約1時間遅延する騒ぎとなった。
混乱を受け、映画館側と観客双方から警察に通報があり、警察官4人が出動。関係者と協議し、場内の秩序回復にあたったが、SNS上で拡散された動画には、他の観客が問題の家族に退場を促す様子や、場内での口論の一部始終がおさめられ、物議を醸している。
法務省によると、本作には「武器を用いた暴力」「身体損傷」「流血」「意図的な殺人」「身体の切断」といった描写が含まれており、これが18歳以上指定の根拠となっている。
Cinemarkは声明で「当社の対応は関係法令の遵守および上映の安全と秩序の維持を目的としたものであり」、該当家族には返金を行い、他の観客に迷惑をかけたことを謝罪したとしている。
同作品が「+18」指定であることをSNS、公式サイト、アプリ、劇場窓口で明示していたと強調し、16〜17歳は保護者同伴または同意書提出で入場可能、15歳以下は保護者の同伴や同意があっても入場不可と告知されていたと述べている。
一方、母親はオンラインで被害届を提出し、チケット購入時に年齢制限の表示がなかったことが今回の混乱の原因だと主張している。警察は映画館代表者から事情聴取を行うなど、捜査は現在も行われている。
ブラジルの年齢区分制度は法務省の管轄下にあり、22年1月より新たな省令が施行されている。制度ではテレビ、映画、ストリーミング、アプリなどの映像作品について、対象年齢を「全年齢」「10歳以上」「12歳以上」「14歳以上」「16歳以上」「18歳歳以上」の6段階で年齢区分が行われ、制作側が暫定的に分類を行う「自己分類制度(autoclassificação)」も導入されている。
分類は性的内容、暴力、薬物の3軸を主な評価基準としており、「18歳以上」指定作品については成人向けの強い表現が許され、15歳未満の鑑賞は保護者同伴や同意書があっても法律上認められない。
『鬼滅の刃』は吾峠呼世晴(ごとうげこよはる)氏による日本の漫画作品で、16~20年に「週刊少年ジャンプ」で連載された全23巻の完結作だ。19年からアニメ化され、高品質な映像が話題となった。20年公開の劇場版『無限列車編』は日本で歴代最高興行収入を記録し、『千と千尋の神隠し』を超える実績を持つ。
日本では、この映画は「PG12」指定(12歳未満は保護者の助言が必要)で、12歳未満でも保護者が同伴すれば鑑賞でき、12歳以上なら保護者の同伴なしでも鑑賞可能。「少年漫画」が原作であり、元々の読者層である中高生を想定して作られている。
だが、米国でも、暴力・血みどろの描写が多数含まれているため「R」指定との情報があり、観覧は18歳以上。未成年は大人の同伴が必要という。
文化的背景と規制の考え方は、国によってかなり異なるため、年齢制限はかなり変わってくる。その中でも、日本は比較的年齢制限が緩やかな国の一つと言えそうだ。
今回の一件は、人気アニメに対する国民の関心の高さを反映するだけでなく、制度の表示義務や保護者側の理解、不透明な認識とのあいだに実際の運用で齟齬が生じていることも浮き彫りにしている。