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COP30目前に警戒強化=CV報復に備えて軍を出動

2025年11月6日

万華鏡1
COP30会期中、連邦警察がベレン市及びその周辺の公共安全の総合調整を担当する(Foto: Polícia Federal)

リオ市のファヴェーラ(スラム街)で実施された大規模掃討作戦により、121人が死亡した事態を受け、第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)という国際的大イベントの舞台となるパラー州ベレン市では、同地で勢力を拡大中のコマンド・ヴェルメーリョ(CV)の報復を恐れて緊張が高まったために、法秩序保証法令(GLO)発令など、警戒レベル引き上げにつながったようだと4日付CBNなど(1)(2)(3)(4)が報じた。

掃討作戦の前から、連邦警察(PF)北部パラー州支局は連邦政府に対し、CV構成員による州内治安関係者への攻撃の可能性を警告する文書を送付していた。また、出先機関に対しても、疑わしい動きがあれば情報部門に即時報告するよう指示。警告内容は連邦政府の治安・国防部門にも共有されており、その後にリオ掃討作戦が起きて更に緊張が高まったことで、ルーラ政権によるGLO発令につながったようだ。

このPF文書は「高度な注意を要する」と分類され、警察官に対して最大限の警戒を保ち、身の安全を脅かす可能性のある経路・地域・状況を回避するよう求めている。特に州都ベレン都市圏における治安部隊への攻撃リスクが指摘されていた。

パラー州ベレン市では10日に開幕するCOP30を前に、国際会議の安全確保の必要から、ブラジル当局にとって政治的・治安的緊張が同時に高まる局面となっている。

ルーラ政権は当初、GLO発令に慎重だったが、警察への脅威情報が相次ぎ、国際会議の安全確保が最優先課題と判断され、2日に発令を決定。3日付官報に掲載した。3日は治安機関や法務省を含む20の関連機関が緊急会議を開き、窃盗事件や不審行動の報告もある会場周辺を含む、警備体制を協議した。

GLOは、重大な治安混乱時に大統領が軍出動を命じることを可能にする憲法上の措置で、今回は2~23日にベレン市および周辺地域で適用される。10~21日開催のCOP30と6~7日に開催される首脳サミットの双方をカバーする。政府は陸海空軍あわせて約8千人をベレン市に配備し、主会場のパルケ・ダ・シダーデ周辺、国際空港、港湾、発電所、水処理施設などの警備にあたらせている。

パラー州は北部アマゾン地域の要衝であり、近年CVの勢力拡大が著しい。研究報告「アマゾン暴力地図2024」によると、CVは州内73市のうち57市で勢力を保持し、特にベレン市とその近郊のアナニンデウア市とバルカレナ市などを実質的に支配。リオ作戦で死亡した121人のうち、ベレン出身者も含めて19人がパラー州出身で、同州が人的供給源となっている実態が浮き彫りになった。

ベレン市ではCVによる支配が地域社会に浸透。住民によると表向きは平穏だが、組織はSNSで指令を出し、住民や商店主に外出制限や警察非協力を求めるケースがある。商業活動に対しては「防犯費」と称する金銭を徴収するなど、ミリシア(民兵)に似た支配構造が形成されつつある。

パラー州政府のウアラメ・マシャード治安・社会防衛局長は、リオ作戦で死亡した人物の一部が「ベレン周辺で警察車両襲撃を指示していた」と明かし、リオ犯罪組織と連携していた可能性を示唆。州政府は、リオ作戦にも情報協力を行っていた。

一方で、国内外の人権団体は、リオの掃討作戦がブラジル史上最も死者の多い警察行動となったことに懸念を表明。一部市民団体は、COP30警備におけるGLO適用を「過度な軍事化」と批判し、権限濫用や市民権侵害の恐れを指摘する書簡を連邦検察庁に提出した。

専門家の間では、COP30を契機とした治安強化が市民社会との緊張を高める可能性も指摘されている。パラー州立大学のアイアラ・コウト教授は、「リオの事例をベレンにそのまま当てはめてはならない。治安の名の下に社会を萎縮させることは、国際会議の趣旨に反する」と警鐘を鳴らす。

COP30会期中は、各国首脳や国際機関、NGO代表など数万人の参加が見込まれる。ブラジル政府は「国際基準に沿った安全対策と透明性を確保している」とし、国内外に治安上の懸念を払拭する姿勢を強調している。


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