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パンタナルで小型機墜落=中国人建築家ユー氏ら死亡

2025年9月25日

万華鏡1
事故で犠牲になった4人(24日付G1サイトの記事の一部)

マット・グロッソ・ド・スル州パンタナル地域の農村地帯で23日夜、小型機が墜落し、乗員乗客4人が死亡する事故が発生した。犠牲者には、世界が注目する中国人建築家のユー・コンジエン(兪孔堅)氏が含まれており、この突然の悲報は建築界のみならず多くの関係者に大きな衝撃を与えている。24日付G1など(1)(2)(3)が報じた。

事故機は、アキダウアナ市に位置するバラ・マンサ農園の滑走路脇に墜落した。同地はブラジル有数の自然観光地で、国内外からの多くの観光客が訪れる。小型機には4人が搭乗しており、全員の死亡が確認された。墜落の原因はブラジル当局により調査が続けられている。

犠牲者の中で国際的な注目を集めたのが、世界で最も有名な建築家の一人ユー氏だ。同氏は北京大学の教授で、世界最大級のランドスケープ設計事務所「トゥレンスケープ(Turenscape)」の創設者兼代表でもある。同氏は、都市における雨水の処理や水害対策を自然の力を活用して行う「スポンジ・シティ(海綿都市)」の概念を提唱し、現代建築と都市計画の潮流に多大な影響を与えてきた。

「スポンジ・シティ」は、コンクリートで覆われた都市が持つ水の排除という従来の発想を転換し、都市そのものが水を吸収・浄化し、再利用できるよう設計するという画期的なアプローチだ。ユー氏のこの理念は、気候変動の影響を受ける世界中の都市にとって実用的かつ持続可能な解決策として注目されており、すでに中国国内70都市以上で実装されている。

ユー氏は1963年生まれ、浙江省出身。北京林業大学を卒業後、米ハーバード大学で博士号を取得。米ランドスケープアーキテクト協会のフェローやローマ大学名誉博士号など、数々の国際的な栄誉を受けている。25年にはフォーブス誌にて「グローバルサステナビリティリーダー」に選出。その「生態学と芸術の融合」と称賛される作品は、学術界のみならず、国際的な建築・環境政策の分野にも広く影響を及ぼしている。

同氏は今回、サンパウロ市で開催された「第14回サンパウロ国際建築ビエンナーレ」の主要招待者の一人としてブラジルを訪れていた。イベント終了後にはパンタナルを訪れ、ドキュメンタリー監督らと共に「スポンジ・シティ」の概念を題材とした映像作品の制作に取り組んでいたとされる。

その撮影を指揮していたブラジル人映画監督のルイス・フェラス氏も、事故機に同乗していた犠牲者の1人だ。同氏はノンフィクションを中心に映像制作を行ってきた人物で、ポルトガル出身の世界的建築家アルヴァロ・シザに迫ったドキュメンタリー『コンクリート・ランドスケープ(Paisagem Concreta)』は高い評価を受け、国際的な映画祭にも出品された。

同じく乗客だったルーベンス・クリスピン・ジュニオール氏は、サンパウロ総合大学(USP)出身の映像作家で、TNT局のリアリティ番組での受賞をきっかけに短編作品『Os 400 Golpes』を制作。その後もドキュメンタリーや現代アートを題材とした映像作品を数多く手がけ、複数のテレビ局や文化機関と協働してきた。

操縦士のマルセロ・デ・バロス氏は事故機の所有者で、航空タクシー業に従事していた。アキダウアナ市を拠点に活動し、パンタナルやセラ・ダ・ボドケーナ地域での飛行実績も豊富だった。

警察の調べによると、事故機は58年製のセスナ175(登録番号PT―BAN)で、航空当局の記録によると夜間飛行の許可はなく、航空タクシーとしての営業許可も持っていなかった。事故後、消防当局は現場の厳しい地形とアクセスの難しさの中、約9時間にわたり捜索・救助活動を行い、遺体の回収と現場の保全に努めた。

ブラジル空軍(FAB)と航空事故調査・防止センター(Cenipa)による調査も継続しており、警察当局も現場での捜査と初期データの収集を進めている。


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