北東部はテクノロジー戦略拠点=デジタル経済発展の先進地に

北東部がテクノロジー戦略拠点として急速に成長している。セアラー州フォルタレザ市を中心に国際海底ケーブルが集中し、データセンター集積地として注目を集め、グローバル企業の関心も高まる。ペルナンブコ州、セルジッペ州、リオ・グランデ・ド・ノルテ州ではイノベーション政策やインキュベーション支援によりスタートアップの成長と雇用創出が進み、インフラと人的資本の両面からデジタル経済を支える新エコシステムが形成されつつあると9月30日付ヴァロール紙など(1)(2)が報じた。
フォルタレザ市のフトゥーロ海岸には欧州、アフリカ、カリブ海、北米を結ぶ12本の国際海底ケーブルが上陸しており、中南米最大規模でブラジルの国際データ通信の約9割を担う。他にもナタール市、ジョアン・ペソア市、レシフェ市など複数の州都にケーブル陸揚げ拠点が分布し、広域的な通信インフラの優位性を築いている。
これを背景に、セアラー州にはAngola Cables社やAscenty社などの主要事業者によるデータセンター12基が設けられ、総設備容量は20MW(メガワット)に達する。HostDime社がジョアン・ペソア市に、Tecto社がフォルタレザ市に、Um Telecom社がレシフェ市に新規施設を建設中で、AI関連ではCasa dos Ventos社がペセン輸出加工区(ZPE)で初期容量300MWのAI向けデータセンターを開発。総投資額は500億レに達し、27年前半の稼働を予定する。
再生可能エネルギー供給の優位性もセアラー州の集積を後押しする。風力・太陽光発電の余剰電力が送電制約で活用されない中、AI向けデータセンターでの消費が期待されている。州立情報技術公社(Etice)のウーゴ・フィゲイレド総裁は「生成AI向けデータセンターにとって豊富かつ安定した電力供給が決定的要素」と述べる。
通信事業者の動きも活発だ。Cirion社は2000年にフォルタレザ市で国際海底ケーブル「SAC1」を運営し、25年初頭にはGoogle社と協業し、ブラジル南東部発の新海底ケーブル「SAC2」の運用を開始。両ケーブルの相互接続も視野に入れている。同社の接続営業支援ディレクター、エドゥアルド・フレイタス氏は「SAC1は十分な容量があり、SAC2とのバランスで拡張が期待される。当社は九つのデータセンターや通信事業者、大手クラウド・コンテンツプロバイダーを結ぶ陸上光ファイバーバックボーンを整備中」と語る。
Um Telecom社は社会経済開発銀行(BNDES)から4100万レの融資を受け、ペルナンブコ州電子技術パーク(Parqtel)で小規模エッジデータセンター「Recife1」の建設を開始。固定無線アクセス(FWA)型5Gを地方展開するBrisanet社も、北東部9州全域で約1千基の通信塔を展開し、650万件のモバイル契約と4万件のFWA回線を提供する。
人的資本育成と起業支援では、ペルナンブコ州の大規模デジタルイノベーションセンター「ポルト・デジタル」が象徴的存在だ。2000年創設のサービス税(ISS)減免措置で歴史的中心地区へのイノベーション企業誘致が進み、現在475社が集積し、その約400社がスタートアップ。年間売上高は62億レ、約2万1500人の雇用を生んでいる。
「ブラジル知識・イノベーションセンター(Cesar)」をはじめ複数の科学技術・イノベーション機関(ICTI)や六つのインキュベーターを擁し、活動はカルアル市やゴイアス州、ポルトガルにも拡大している。
ポルト・デジタルのピエレ・ルセナ会長は「レシフェはブラジル国内で最もテック雇用が伸びており、過去1年で12%増加した。自治体と連携した奨学金制度『エンバルケ・デジタル』の成果だ」と指摘。CesarのCEOエドゥアルド・ペイショット氏は「AI、サイバーセキュリティ、高性能計算の3分野を軸に社会に資するイノベーションを加速する」と語る。
セルジッペ州では04年設立の科学技術・ビジネス支援拠点「セルジッペ・テック」が情報通信技術、再生可能エネルギー、バイオテクノロジー、アグリビジネスの企業育成を行い、現在74社が入居、600人の直接雇用を生む。同施設は約1千万レの公的支援を受け「エネルギー転換ハブ」構築に着手した。
リオ・グランデ・ド・ノルテ州ではリオ・グランデ・ド・ノルテ連邦大学(UFRN)附属のデジタル・メトロポレ研究所(IMD)がビジネス創出に取り組み、170社・3千人の雇用を抱える。35社が入居するインキュベーターを有し、技術者・大学生・大学院生の育成も担う。マカイバ市には「アウグスト・セヴェロ科学技術パーク(PAX)」が整備されつつあり、エネルギー、医療、インダストリー4・0分野で学術機関と連携したイノベーションが始まっている。