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強制送還に怯える中南米系移民=母国送金急増で経済に影響

2025年10月3日

万華鏡1
1月、米カリフォルニアで行われた不法移民の強制送還の様子(Foto: Casa Blanca/divulgação)

トランプ政権の強硬な移民対策により、米国内の中南米出身の移民たちは、強制送還への恐怖から稼いだ資金を急いで本国へ送金する動きを強めている。現地銀行や送金サービスはデジタル化で対応を進める一方、移民の生活は依然不安定だと2日付ヴァロール紙(1)が報じた。

トランプ第2期政権下で、中南米諸国への送金は二桁成長を記録。同地域は、25年末までに米国から計1610億ドルの送金を受ける見込みで、24年実績を8%超上回る水準となる。

現政権は大量強制送還のための大規模な警察作戦を指示し、新規採用された移民執行官には、拘束数に応じた報奨金を提供する。多くの移民は米国での滞在期間が縮まる懸念から、資産の保全を急いでいる。25年はすでに、18万人以上が強制送還されている。

ホンジュラス出身のウイルメルさん(23歳)は、米到着以来、工場勤務やDJとして働き、家族に送金してきたが、4月に義父がダラス郊外の交通検問で拘束されたことを受け、自身も拘束に備え、資金をホンジュラスの銀行口座へ移した。「強制送還されればここにあるお金は失う」と不安を語る。

メキシコ向け送金は減少傾向だが、ハイチ、エルサルバドル、グアテマラなど小規模国へは前年比約20%増加。ホンジュラスでは25年1~8月の送金額が前年同期比25%増で、主に食費、公共サービス、医療費に充てられ、一部は住宅改修や教育費にも使われている。

トランプ政権発足後数カ月間の移民拘束数はバイデン末期の2倍以上に急増。ウイルメルさんは移民裁判で「自主的出国」を認められた。これは本人の意思で自発的に国外退去する制度で、一定条件下で適用される。

ホンジュラス銀行は送金需要に応え、ユーチューブやインスタグラムで口座開設やドル建て資金保管を宣伝。同国中央銀行は1月の送金急増を「移民の予防的送金」と分析し、深刻さを示唆した。メキシコ小売大手エレクトラと子会社アステカ銀行は、送金を担保にバイクやテレビのクレジット提供を強化している。

国際送金大手ウェスタンユニオン代理店AirPakは、銀行口座を持たない移民からの送金増を指摘。現金を自宅に保管する代わりに、口座を持つ受取人に資金移動で安全を確保しているという。

デジタル送金プラットフォームも急拡大し、ワッツアップ上のチャットボット「Sara」で送金管理が可能に。RemitlyやWiseは今年8月までにアクティブユーザーが前年比20%以上増加と報告している。

送金増加は貯蓄や特別送金によるもので、25年前半の銀行口座経由の送金比率は約30%で、前年末の20%から上昇。研究者によると、強制送還リスクが高い近年の移民ほど送金額が多い。

一方、移民たちの送金先地域では、治安の悪化や雇用の不足など、様々な課題が山積している。

特に、11月に行われるホンジュラス大統領選挙に注目が集まる。現職のシオマラ・カストロ大統領は、トランプ政権が強制送還フライトを開始する前に米軍基地の閉鎖を示唆したが、すぐに撤回した。元大統領がコカイン密輸の容疑で米国に拘束されるなど、混乱が続く同国では、有権者の間にさらなる改革を求める声が高まっている。

同国経済は約38億ドル規模で、バナナ、コーヒー、パーム油の輸出に依存しており、産業雇用の多くはギャングの抗争が激しい都市部に集中している。

移民家族は、強制送還による借金問題という新たな重圧にも直面している。多くの家族はコヨーテ(密入国斡旋業者)への支払いのため、土地を担保に借金を抱えており、親族が送還されれば返済は困難となる。

ホンジュラス在住のラケルさんによれば、テキサスにいる兄は米国入国を2度試み、2万ドル超の借金を負った。彼女は、その返済担保となっている家の権利証書の保有者に送金を続けているという。

トランプ政権の移民排除政策は、送金を通じて中南米の経済や移民コミュニティに複雑な影響を与えている。強制送還の脅威の下、移民は限られた資金を家族の生活維持に振り向け、生存を図る厳しい状況に置かれている。 


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