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南米初のホラシス会議開催=「ブラジルは国際的にトレンディだ」

2025年10月2日

万華鏡1
フランク=ユルゲン・リヒター氏(Foto: Andrei Melinte/Divulgação)

スイスを拠点とするシンクタンク、ホラシス(Horasis)の国際会議「第10回ホラシス・グローバルミーティング」が、10月8〜10日にサンパウロ市で開催される。世界70カ国から約1500人のリーダーが集結し、気候変動や地政学的緊張、技術革新といった複合的課題に対し、南北を超えた対話と実践的連携の可能性を探る。6月3日付ブラジル・エコノミーなど(1)(2)(3)が報じた。

初の南米開催となる今回、ホラシス創設者で世界経済フォーラム(WEF)の元ディレクター、フランク=ユルゲン・リヒター氏は、ブラジルを「合意形成を生み出す天性の設計者」と位置づけ、同国が国際社会における架け橋として果たす役割に期待を寄せている。

ホラシスは従来の閉鎖的なエリートフォーラムとは異なり、若手起業家や先住民コミュニティ、科学者、市民団体の代表ら多様な声を積極的に取り入れていることが特徴。リヒター氏は、「未来は閉ざされた会議室で決まるのではなく、異なる視点が交差する場でこそ形成される」と強調している。

ホラシスの設立背景には、WEFの限界に対する批判的視点がある。20年以上前にWEFを離れたリヒター氏は、当時のダボス会議が新興国の現実から乖離し、包括的な対話を欠いていると考えた。開催地を変えながら地域ごとの実情に即した対話の場を提供する形にし、中国、ベトナム、インド、アラブ首長国連邦、ポルトガルでの開催を成功させてきた。24年にはブラジル南東部エスピリトサント州ヴィトリア市で450人規模の会議を行い、今回の前哨戦としての役割を果たした。

今回の開催は、サンパウロ州政府とのパートナーシップの下で実施され、タルシジオ・デ・フレイタス州知事がホスト役を務めるとともに、外国政府代表の招請にも関与するなど、強力な政府支援体制が敷かれている。

ホラシスは単なるシンクタンクにとどまらず、「討議と実践を両立する『ドゥタンク(問題解決に向け、具体的行動を重視する頭脳集団)』」としての側面も持ち、過去にも具体的なビジネスや外交の成果を生み出してきた。リヒター氏は、「今回のテーマは『協力の力を活かす』。南半球の国々がより多くの声と役割を持つ持続可能な未来のために、新たなグローバルフォーラムを築く」と意気込みを語る。

リヒター氏は、ブラジルが環境リーダーシップを発揮するとともに、技術革新の分野での成長機会を有し、強固な経済基盤と長年培われた外交伝統を背景に、自然な合意形成者としての役割を担うと評価している。特に、サンパウロ市の経済規模は単独で多くの中南米諸国の総和を凌駕しており、その豊かな資源と人的資本が国際的影響力の根幹を成すと見なされている。

会議には最高経営責任者(CEO)や投資家、政府関係者、学者、市民社会の代表ら、多彩な分野のリーダーが集結。参加者約1500人のうち、1千人が講演者として登壇。女性講演者の割合は約4割を占め、多様な視点が反映される。議題は気候変動、人工知能の進展、都市モビリティ、保健、若者の社会参加、女性リーダーシップ、現代の地政学的課題など多岐にわたり、複雑化する国際社会の急務を反映している。単独での解決が困難な問題が多いなか、協調と実践的な連携の必要性がいっそう際立っている。

ブラジルは24年のG20の成功を踏まえ、25年11月の第30回気候変動枠組条約締約国会議(COP30)を控え、重要なタイミングにある。BRICSの一員としてグローバルな生産チェーンで新たな役割を担うことが期待されており、リヒター氏はそうした動向を背景に、「今年のブラジルは国際的に『トレンディ(流行の最先端)』だ」と表現している。

リヒター氏は、これからの10年を左右するキーワードは「協力」であるとし、気候変動や地政学的リスク、人工知能の急速な発展、そして拡大する社会的不平等といった地球規模の課題に単独で立ち向かうことは不可能だと強調。よって、国境や政治体制の違いを超えた実効的な連携こそが、持続可能な未来を築く唯一の道であると述べている。


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