スザノ・イペランジアホーム=改修工事終了お披露目式=日本財団の尾形会長も出席
「一番大切なのは、造った建物をどのように運営し、いかに入居者が住みやすいようにしていくか」―。サンパウロ日伯援護協会(援協、税田パウロ清七会長)傘下の高齢者施設「スザノ・イペランジアホーム」の日本財団(尾形武寿会長)助成による改修工事終了お披露目式が7日、スザノ市の同ホームで行われ、日本から来伯した同財団の尾形会長は冒頭の言葉を強調していた。
援協の説明によると、昨年10月から1年がかりで行われてきた同ホームの改修工事には総計300万レアルの経費がかかり、そのうち日本財団が75%を資金援助し、援協が残りの25%を負担することで合意。イペー棟(旧棟)の全面改修工事により、30床だった入居者部屋が改めて45床になり、事務所も拡張されたという。また、日本財団助成による為替差益を生かし、20年前後使用してきた入居者部屋の家具を新調することも同財団の承諾を得て実現したそうだ。
7日午前10時から開会されたお披露目式には、日本財団の尾形会長一行をはじめ、地元スザノ市のイシ・ペドロ市長、高山アルツール同市議会議長、スザノ福博村会の高木政親(まさちか)会長など地域日系社会関係者、在サンパウロ日本国総領事館の高元次郎首席領事、宮崎明博JICAブラジル事務所長、援協の税田会長および理事会役員、与儀昭雄評議員会長、菊地義治名誉会長ら約50人が出席した。
前園マルセリーノ事務局長の司会で進行した式では、同ホームの中田和夫運営委員長があいさつし、「日本財団の全面的なご支援のお陰で立派な部屋が出来上がり、入居者の方々にも楽しい日々を過ごしてもらっています。45人の定員になるまで、運営委員会のスタッフと一緒に部屋を満杯にしていきたい」と意欲を見せていた。
援協の税田会長は、同ホームが故・内谷(うちや)忠雄夫妻の土地寄贈によって1983年に落成し、老朽化していた建物が2001年と17年の日本財団からの資金援助によって新築された同ホームの歴史を振り返った。その上で、このたびの改修工事にも同財団からの助成が行われたことに改めて感謝の気持ちを表した。
イシ市長、宮崎JICA所長、高元首席領事に続いて祝辞を述べた日本財団の尾形会長は、南米・中南米の日本人および日系人が艱難(かんなん)辛苦の中で各地域を切り開き、「勤勉、真面目」といった評価を受けてきたことに言及。現在の日系社会の発展が先祖の苦労の上に成り立っていることを強調した上で、「このたびの改修工事をお手伝いするにあたり、いつも感心するのは運営する人々が真摯に働き、スタッフも心優しい方々が多いということ。人生の最期を送る『終(つい)の棲家(すみか)』となる場所として、皆様が頑張っておられることに感謝いたします。一番大切なのは造った建物をどのように運営していくのか、またいかに入居者が住みやすいようにするかであり、この仕事に携われたことを自分でも誇りに思います」と語った。
引き続き、同ホームに勤務して9年目となる石橋プリシラさん(43、3世)のオメナージェンが行われた後、税田会長から尾形会長に感謝を込めた記念プレートが手渡された。石橋さんは、祖父の初雄さん(故人)、父親の重良(じゅうりょう)さん(故人)と3代にわたって同ホームの運営に協力しており、9月28日に83歳で亡くなった父・重良さんが、この日のお披露目式を楽しみにしていたことを振り返って感極まった。
その後、入居者を代表してペレス佐藤さち子さん(92、2世)が尾形会長をはじめとする来賓に記念品を手渡した。サンパウロ州プレジデンテ・プルデンテで生まれ、80年以上にわたってスザノ・パルメイラス地区で過ごしてきた佐藤さんは、同ホームに入居してまだ数年だという。「ここ(ホーム)は日本人も多いし、日本食もブラジル食もあるし、自分で出来ることは何でもやるよ」と元気な姿を見せていた。
改修記念のテープカットと記念プレートの除幕が行われた後、三島セルジオ施設長が改修された施設内を案内した。場所を食堂に移し、与儀評議員会長の音頭で乾杯。出席した人々は振る舞われた昼食を楽しみながら、歓談していた。