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農業貴族が集う町ゴイアニア=独自の新興富裕文化で注目

2025年12月3日

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ゴイアニア市(Foto: Paulo José/Prefeitura de Goiânia))

ブラジル中西部ゴイアス州の州都ゴイアニア市が、富と華やかさの新たな中心地として脚光を浴びている。かつてサンパウロ市やリオ市に集中していた国際ブランドの旗艦店や高級車ディーラー、チャーター機サービス、豪華マンションの仲介業者が、ゴイアニア市に流れ込みつつある。人口と経済規模で中西部最大の同市は、農業ビジネスの力強い成長に支えられ、高所得層の消費活動やライフスタイルの発信地として急速に台頭し、その変貌ぶりに注目が集まっていると2日付BBCブラジル(1)が報じた。

都市の繁栄は建築や文化にも表れている。SNS上では「グレコ・ゴイアナ建築」と呼ばれる独特の様式が話題となり、巨大な扉やネオクラシック様式の柱、古典ギリシャ・ローマ建築を連想させるファサードが目立つ。この美学は、市民や訪問者にとって都市の象徴的存在だ。

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グレコ・ゴイアナ建築の一例、写真はセルタネージョ歌手グスターヴォ・リマの邸宅(Foto: Reprodução Instagram)

高級ブランドの出店も相次ぐ。ショッピングモール「フランボイアン」にグッチやルイ・ヴィトンが出店し、24年にはシャネルがブラジル最大のブティックを開設。ゴイアニア市で活動するスタイリストのケイラ・モウラ氏は、「パンデミック以降、SNSでの自己表現が重視され、ラグジュアリー商品の需要が急増した」と語る。

同市は治安が比較的安定しており、24年の意図的暴力死の率は人口10万人あたり14・9人で、国内主要都市の中で6番目に低い。安全性は高級品の購入や日常的な使用を後押しする要因となっている。

自動車市場も、農村型から都市型への変化を反映している。郊外では依然としてピックアップトラックが人気だが、都市部ではポルシェやフェラーリなどの高級スポーツカーが主流だ。ポルシェ718は1台100万レ(約2915万円)以上で取引され、高級車文化が根付いてきた。最高価格は800万レに達する車両もある。

空の移動市場も拡大中だ。国内ジェット機の27%が中西部に所在し、ゴイアニア市周辺には7社のエアタクシー事業者と70の整備工場がある。リーデル・アヴィアソン社はゴイアナポリス市を拠点に、ミナス・ジェライス州ベロ・オリゾンテまで1時間10分で移動できる6人乗りチャーター便を提供。国外へのチャーター需要も増え、パリやリスボンへの便は1便約100万レに上る。

不動産市場も急成長している。ゴイアニア市は国内第3位の不動産市場でありながら、平米単価は比較的低く、高級住宅の開発が進展中だ。24年には市内および近郊で過去最多の新規開発が記録され、富裕層向けのマンションやオフィスが相次いで建設された。

中でも24年3月に入居開始の「エピック・シティ・ホーム」は、3~5室のスイート、330~880平米の住戸、テニスコート、スパ、露天風呂を備え、都市圏の高級住宅市場で注目を集めている。多くがコンドミニオ(ゲートコミュニティ)に位置し、塀のない住宅でも監視体制を整えるなど、安全面への配慮も徹底されている。

経済成長も顕著だ。地理統計院(IBGE)のデータによれば、2002~23年の中西部の国内総生産(GDP)の平均成長率は年3・4%で国内最高。人口も年平均1・23%増加し、セナドール・カネド市など高密度の都市で特に顕著だ。農業や関連産業の力強い成長が、都市の富裕層の消費や文化発信を支えている。

この新興富裕層の生活やライフスタイルは、リアリティ番組『セラードのパワフルな女性たち(Poderosas do Cerrado)』(globoplay.globo.com/poderosas-do-cerrado/t/6fhhyPpCt9/)で紹介されている。インフルエンサーや農業、高級イベントに携わる6人の女性の姿を通じて、都市部の富裕層が享受するブランド品や豪華なライフスタイル、豊かさが映し出される。

ある女性は同番組で宝飾や高級品に囲まれた日常を見せ、「畑での重労働の賜物よ。パリで泣くとしても、美しい服を着て泣く方が良い」との言葉は、新興富裕層文化を象徴する。

ゴイアニアは、格差問題を抱えつつも、ブラジルの新たな富の発信地として確固たる地位を築きつつある。


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