葛西叙江「1年がかりの芸術」=カーニバルの情熱と奥深さ語る=商議所異業種交流委員会
今週金曜(13日)晩から、サンパウロではサンバチームのパレードが始まる--。ブラジル日本商工会議所の異業種交流委員会は1月27日、今年第1回目となる講演会「ブラジルのカーニバル文化とその多様性 〜現地在住者が語る体験と魅力〜」を開催した。講師には、サンバダンサーとして日伯で活躍してきた葛西叙江(じょえ)さんを招き、約70人が来場。軽快なリズムに合わせたサンバステップの実演も交えた講演に、会場は次第に熱を帯び、自然と笑顔と拍手に包まれた。
葛西さんは2000年から浅草サンバカーニバルに参加し、2003年に初めてブラジルの地を踏んだ。2005年にはサンパウロで名門チームのパシスタとしてデビュー。2008年に移住後はサンバ教室を開設し、2009~16年はリオのカーニバルにも連続出場した。現在はサンパウロを拠点に、日本人向け参加ツアーや指導、文化交流に携わり、2025年には再びリオでパシスタとして舞台に立った。
講演は、2025年にリオで優勝した名門「ベイジャ・フロール」の映像上映から幕を開けた。轟く打楽器、揺れる羽根飾り、観客の歓声がスクリーン越しに迫る中、葛西さんは「ブラジルは一言では語れない国。多様性こそが最大の魅力です。カーニバルは感動の連続ですが、時には〝とんでもない目〟にも遭います」と切り出し、会場の空気を一気につかんだ。約20年に及ぶブラジル生活の中で体験した、華やかな舞台の裏側が率直な言葉で語られた。
カーニバルの姿は地域ごとに大きく異なる。リオやサンパウロではサンボードロモを舞台にした豪華絢爛な競技型パレードが展開される一方、サルバドールでは巨大音響トラック「トリオ・エレトリコ」が街を揺らし、レシーフェやオリンダでは人形とフレーヴォの軽快な踊りが街角を彩る。「同じカーニバルでも、場所が変われば文化も音も、空気さえまったく違う」と強調した。
さらに、パレードの審査基準や制作現場の実情にも踏み込んだ。1チーム2500人以上が関わり、山車(カーホ・アレゴリコ)1台に数千万円以上を投じることも珍しくない。「カーニバルは〝1年かけて作る芸術〟。7カ月にわたり、職人や労働者が寝泊まりしながら準備を支えている」。踊りの背後にある人々の生活と経済の重みを、静かに伝えた。
リオ滞在時のエピソードでは、「ファベーラ近くに住み、銃を持つ人を見ることもあった。でも、危険を含めて現地の人と同じ空気を吸うことが、本当のカーニバル文化を理解することだと思った」と語り、聴衆は真剣な表情で聞き入った。
終盤には「10分で覚えるサンバステップ講座」が行われ、参加者全員が立ち上がり、手拍子とともにリズムを体感。ぎこちなかった動きは次第に揃い、会場には一体感が生まれた。
参加者からは「華やかな映像の裏に、これほど多くの人の暮らしと情熱があるとは知らなかった。いつかサンバ会場で体験したい」との声が聞かれた。
最後に葛西さんは、「カーニバルはただのお祭りではなく、情熱が集まって生まれる文化そのもの。機会があれば、ぜひ会場でこのエネルギーを感じてほしい」と締めくくり、講演会は熱気の余韻を残して閉幕した。








