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景気は好調、なぜ生活苦?=「体感景気」が政治動向を左右

2026年4月7日

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物価上昇が家計を圧迫し、購買力の低下が続く(Foto: Marcello Casal JrAgência Brasil)

 ブラジルでは失業率が歴史的低水準にあり、実質所得も過去4年間にわたり着実に伸びている。にもかかわらず、多くの国民は生活改善を実感していない。経済指標と体感景気の乖離が広がるなか、その背景を「物価高の逆説」と捉える分析が示された。家計を圧迫する生活費の上昇が統計上の好調さを相殺し、政権評価にも影響している可能性があると、5日付ヴァロール紙(1)が報じた。

 資産運用会社Kinitroの調査は、こうした状況とルーラ第3期政権に対する低評価の関係を分析した。同調査は、主要経済指標の改善が高い生活費によって打ち消される現象を「物価高の逆説」と定義した。

 調査では、基礎食料品セット(セスタ・バジカ)の価格を基準とした生活費指数(ICV・食料)を用い、実質的な購買力に焦点を当てた。この指標でみた生活費はコロナ禍後に大きく上昇した。同様の傾向は各国でもみられるが、ブラジルでは家計所得に占める債務返済比率が高く、影響が一段と強い。中央銀行によると、この債務負担は2026年初めに過去最高水準に達した。

 調査は、有権者が政府を評価する際、GDP成長率や失業率、インフレ率といった指標以上に、自身の生活費の実感を重視していると指摘する。食料に関する生活費指数が悪化すると政権評価も低下する傾向がみられ、日常の経済環境が政治動向に直結していると分析した。

 2010〜15年には、この指数の移動平均はおおむね2・8倍前後で推移し、平均的な国民は可処分所得でほぼ三つの基礎食料品セット(セスタ・バジカ)を購入できた。16年に大きく落ち込んだ後、19年までに約2倍まで回復したが、コロナ禍前の水準には戻っていない。

 回復は続くものの、24年以降はそのペースが大きく鈍化している。層別分析でも、すべての区分で過去ピークを下回る状況が確認された。労働所得のみに依存する層では、過去最高との差が約20%に達する。

 非正規労働者では指数が2・1倍と、歴史的平均の2・3倍に近づきつつあり、比較的速い回復がみられる。ただ、この改善は生産性や賃金単価の上昇によるものではなく、主に労働時間の延長によるものとされる。特にギグエコノミー(単発・短期の仕事を請け負う働き方)では、労働時間を増やすことで生活費上昇に対応している可能性がある。

 月収が最低賃金の3倍以下の層では、コロナ禍前に約5・1倍だった指数が、現在は4・3倍前後で停滞している。この層は所得税非課税の対象だが、改善は限定的にとどまる。

 一方、中間所得層はより厳しい状況に置かれている。低所得層が社会給付で下支えされ、高所得層がインフレの影響を吸収できるのに対し、中間層は生活費と金融負担の増加で可処分所得の余裕が削られている。

 月収5千レアル前後の層は脆弱層には含まれないが、食料費や債務返済の増加で家計の余力が縮小している。減税措置は一定の効果を持つものの、構造的な物価上昇の前では限定的と受け止められている。この層の指数が4・3倍で停滞していることが、経済改善の認識と政権評価の乖離を生む一因とされる。

 年金受給者は分析対象の中で最も厳しい。過去15年間、約2・6倍で安定していた購買力は大きく低下し、現在は2倍を下回る水準で停滞する。最低賃金の引き上げにもかかわらず実質所得が伸びない背景には、食料価格の上昇が名目所得の伸びを上回っていることがある。

 調査はさらに、2005〜25年の大統領支持率と食料購買力の関係を分析し、後者が前者の変動の約6割を説明するとした。サービスインフレや失業率など他の指標を上回る結果で、食料購買力が1%低下すると、四半期ベースの純支持率は約0・40%ポイント低下する傾向が確認された。

 調査は「就業していても収入が食料価格に追いつかなければ政治的支持には結びつかない」と指摘する。一般サービスの値上がりは受け入れられても、生活必需品のインフレは許容されにくいとし、政権は雇用やインフレといった統計指標だけでなく、「家計の持続可能性」が支持率を左右する重要な要因になると結論づけた。


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