site.title

SNSが結んだ「魂の共鳴」=沖縄の心、世代と海を越えて=公演「真・想響琉風」

2026年4月23日

画像スライダー (5枚)

 4月17日の夜。サンパウロ市リベルダーデ区のブラジル沖縄県人会館の重厚な扉を抜けると、そこには涼しい夜風を跳ね返すような熱気が渦巻いていた。移民の歴史が、今この瞬間に沸き立つ会場いっぱいの若者たちの歓声と混じり合い、不思議な高揚感を生んでいる。公演「真・想響琉風」の舞台から響いてくるのは、腹の底を突き上げるようなエイサー太鼓の振動だ。沖縄からやってきたヴォーカルグループ「5th Elements(フィフス・エレメンツ)」の公演は、単なる音楽興行の域を超えていた。

 この夜の熱狂を導いたのは、現代のテクノロジー、SNSだった。沖縄で生まれた一曲の歌「ウムイ 〜想い〜」(5th Elementsと前田秀幸)をSNSで見たブラジルの若者が連絡をとり、この公演の実現に繋げた。曲中の《わしんなよ ウチナーの心/いつまでも いつまでも/繋がってく命の奇跡を/忘れない 愛の島 結の島》というメッセージは、アイデンティティの狭間で揺れる三世、四世にとっての「心の灯台」となった。

 81年前に凄惨な戦火に見舞われた沖縄、そして海を渡った先で「ジャポネス・ガランチード(信頼される日本人)」と呼ばれるまで差別を耐え忍んだ先人たち。その苦難の歴史を肯定し、今を生きる力に変える歌詞が、地球の裏側の若者たちを突き動かした。今回初めて踏むサンパウロの土、初めて目の当たりにするブラジル・ウチナーンチュの熱量に、アーティストたちも魂を揺さぶられていたようだ。

 YUさんは「ここまで熱心なのにビックリした。とても力強い太鼓の音がする。ブラジルの方の沖縄への思いが、沖縄の人よりも熱い。その思いをまた沖縄へ持ち帰って伝えたい」、A―RAさんも「沖縄の文化やおじい、おばあの思いを、2世や3世も受け継いで、大事にしてくれていることが本当に嬉しい」。彼らの言葉は、技術がいかに進化しても、最後に人を動かすのは剥き出しの「魂の共鳴」であることを物語っていた。

 「ウムイ」に感動してこのプロジェクトを主導したのは、若きリーダー、奥山秀紀さん(27歳、3世)だ。特筆すべきは、秀紀さんが沖縄の血を引かない栃木県出身者である点だ。日系社会における文化継承が、今や血縁という狭い枠組みを飛び越え、「志」を同じくする者たちへ託される新しいフェーズに入ったことを、彼の存在が証明している。

 彼の熱意は、ボランティアの域を遥かに凌駕していた。本場の風を仲間に肌で感じさせるため、アーティストの家族を含めた総勢8人の来伯費用を工面すべく、物販やイベントを繰り返して奔走した。重い開催資金を背負いながら、彼は「本物」を呼ぶことにこだわった。「若い人たちに本気の魂を宿らせるには、直接沖縄から来てもらうのが一番だと思った。みんな本気なんです」。彼が流した汗と、資金繰りに奔走した泥臭い努力。その結晶が、このステージの輝きとなっていた。

 ステージで躍動するのは、結成わずか11カ月の「想響」をはじめ、「友力の絆」「心和」といった新進気鋭のエイサー太鼓だ。ここ3年前後で一気に芽吹いたこれらの新勢力は、いわば「ブラジル・エイサーの革命」だ。飛沫をあげる汗、弾けるような笑顔、そして力強く大地を蹴る足音。五百人の観客を前に、5th Elementsと若者たちが一体となって披露した演舞は、もはや過去の繰り返しではなかった。

 全曲が終わり、割れんばかりの拍手の中で5th Elementsの二人は感極まった表情でこう締めくくった。「100年前の移民の皆さんの苦労があり、今、僕たちが繋がっている。沖縄の心を忘れず、また必ず戻ってきます」。彼らのその誓いは、会場にいたおじい、おばあたちの目尻に光る涙を誘い、明日を担う四世たちの胸に熱い灯を宿した。



沖縄の風、ブラジルに響く=17日公演前の記事 沖縄の風、ブラジルに響く=17日公演
Loading...