韓流、ブラジルに深く浸透=文化輸出が生む新たな経済圏
韓国発のポップカルチャーが、ブラジル社会の各層に着実に浸透している。音楽や映像、文学、ファッション、食文化に至るまで影響は広範に及び、消費の枠を超えて生活様式や価値観にも変化が見られる。関連輸出額は近年大きく拡大し、文化産業は韓国経済を支える重要な柱の一つとなった。10日付ヴァロール紙(1)はこの動きについて、「一過性の流行ではなく、長期的な国家戦略の成果」と位置付け、ブラジルにとって示唆に富む事例だと報じた。
その象徴的な出来事として注目されているのが、10月28日、30日、31日にサンパウロで予定されている韓国のボーイズグループBTSの公演だ。2019年以来となる来伯公演で、チケット販売は開始前から大きな関心を集めている。一部では年初からチケット入手を見越して販売関連施設周辺にファンが集まり、順番待ちのためにキャンプを張る動きも報じられた。(2)
ブラジルにおけるK―POP人気の高さはデータにも表れており、韓国国際文化交流振興院(KOFICE)の2022年調査では、ブラジル人回答者の35.6%が最も好む韓国アーティストとしてBTSを挙げた。音楽配信サービスの集計でも、ブラジルは世界で5番目にK―POPの消費が多い市場とされる。
こうした動きの背景には、韓流の総合的な拡大がある。韓国の文化産業は映像、音楽、出版、ゲームなど多様な分野で成長を続けており、輸出の拡大が続く。単なる文化発信にとどまらず、外貨獲得を担う産業として定着している点が特徴だ。
ブラジル国内でもその影響は多方面に広がる。プレイリストに並ぶ楽曲、書店の棚に並ぶ翻訳書、街中の飲食店のメニュー、動画配信サービスのラインアップ、さらにはファッションや美容習慣に至るまで、韓国文化は日常の中に入り込んでいる。こうした変化は個々人の選択や行動にも反映されている。
アドリアーナさんは、大学時代に音楽をきっかけに韓国文化への関心を深めた。配信サービスの「おすすめ」から楽曲に触れ、ドラマや映画へと関心を広げた後、より深く文化に触れるために関連イベントに参加するようになった。コロナ禍では音楽が精神的な支えになったという。
サンパウロ州内陸部に住むイゴールさんも、日本のアニメを入口にアジア文化への関心を広げ、現在ではK―POPや韓国ドラマを日常的に楽しんでいる。音楽や映像を通じた文化接触が、地域や世代を越えて広がっている様子がうかがえる。
在伯韓国文化院はこうした需要を背景に活動を強化している。サンパウロのパウリスタ大通りにある同施設では、毎月定期的にドラマ鑑賞と意見交換を行うクラブ活動を開始する予定で、2025年の新作や人気作品が題材として選ばれている。すでに前年には読書会も発足しており、文学分野を含めた文化の受容基盤が整いつつある。
映像分野では、韓国作品の国際的評価が高まっている。映画や配信作品は世界各地で視聴され、ストリーミングサービスを通じて同時的に拡散する構造が定着した。2025年に配信されたアニメ作品「Guerreiras do K-Pop」はストリーミングサービス上で大きな視聴数を記録し、関連楽曲も世界的な音楽チャートで長期間上位にとどまった。
文学においても変化が見られる。2024年には作家ハン・ガン氏が同国初のノーベル文学賞を受賞し、同国の作品への関心が一段と高まった。ブラジル国内の出版社は翻訳作品の刊行を進めており、受賞作から現代的なテーマを扱う作品まで幅広いジャンルが読者に受け入れられている。こうした動きは、すでに韓国文化に親しんでいる層の存在とも相互に作用している。
ファッションや飲食の分野でも同様の傾向が確認される。サンパウロでは韓国料理を提供する店舗が特定の地域に集まりつつあり、若年層向けの店では視覚的な演出やメニュー構成に韓国的要素が取り入れられている。ファッション業界でも、異なる文化要素を組み合わせたブランドが登場し、一定の支持を得ている。
こうした広がりについて、ジェトゥリオ・ヴァルガス財団(FGV)の研究は、文化消費が複数分野に連鎖する構造を指摘する。音楽を入口に映像や食文化、言語学習へと関心が広がる「エコシステム」が形成されているとされる。
ファンコミュニティの役割も無視できない。オンライン上での翻訳や情報共有、オフラインでの交流活動などを通じて、独立した文化ネットワークが形成されている。こうした活動は、従来の流通経路とは異なる形でコンテンツの拡散を支えている。
この広がりの背景には、長期的な政策の積み重ねがある。1990年代末の経済危機以降、韓国政府は文化産業を戦略分野として位置づけ、税制優遇や資金支援、輸出促進策を導入してきた。これにより産業構造の多角化が進み、文化分野への継続的な投資と人材育成が行われている。
さらに、外国展開を担う専門機関が設立され、企業支援や国際共同制作の促進が進められてきた。ブラジルでも関連機関の活動が強化され、文化イベントや教育プログラムを通じて接点が拡大している。さらに2026年2月には、両国の政府関係者が文化分野における人工知能や著作権の課題について協議を行い、デジタル時代に対応した制度整備が議論された。
韓国の事例は、ブラジルにとって、文化コンテンツを経済資源として機能させるには、継続的な政策と民間の活動、人材育成の連携が不可欠であることを示している。ブラジル側でも、文化と経済を結び付ける政策の整備が進められている。文化省の再編や中長期計画の策定など、制度的な枠組みは整いつつあるが、産業としての統合的な運用や国際展開の面では引き続き課題が残るとされる。








