《ブラジル》ボルソナロと最高裁が緊迫の幕開け=フクス長官は大統領に釘指す=情報漏洩容疑には不逮捕特権

最高裁のルイス・フクス長官は1日、今年の最高裁の開廷の挨拶を行い、 「民主主義に暴力の余地はない」として、選挙年であることを喚起すると共に、国民に忍耐を求めた。これはボルソナロ大統領に対する強い牽制でもあると1、2日付現地紙、サイトが報じている。
フクス長官は開廷の挨拶で、10月に行われる統一選に言及し、「複数の視点に対し、礼儀正しく対処することが求められる時だ」「民主主義においては『奴ら対自分たち』という図式は機能しない。全てのブラジル人が国民としての良心を追求すべき時だ」と語った。
同長官はその上で、「最高裁は憲法の番人であり、選挙が安定と忍耐を持って行われるように務める」と語り、「民主主義に暴力が入り込む余地はない」と言い切った。
選挙に関する暴力行為は昨年の1月6日、米国大統領選で敗れたトランプ前大統領が負けを認めず、選挙不正を訴えて、自身の支持者たちにジョー・バイデン氏の大統領承認式が行われる連邦議事堂を襲撃するように煽った事件以来、警戒感が強まっている。ボルソナロ氏はトランプ氏の熱心な支持者としても知られている。
ボルソナロ氏も昨年、18年の大統領選で不正があったと証拠もなく訴え続けており、自身の求める「印刷付電子投票(ヴォト・インプレッソ)」の導入案が下院で却下された際、9月7日の独立記念日に最高裁への抗議活動をと煽った。これにより、同氏の支持者らが三権広場に侵入し、危機感を煽る事態が起きている。
また、同日は選挙高裁も開廷しており、同高裁長官としてボルソナロ氏と対峙してきたルイス・ロベルト・バローゾ最高裁判事が、ボルソナロ氏が昨年8月4日のライブで、選挙高裁へのハッキング行為に関する連邦警察の捜査情報を漏洩した件に関して、「世界中のネット犯罪者やハッカーたちを手助けしかねないもの」として、警鐘を鳴らした。
ボルソナロ大統領は1日の開廷式に呼ばれていたが、「サンパウロ州の豪雨被災地をめぐる」との理由で欠席した。大統領は昨年末のバイア州での豪雨の際は休暇を理由に現地に赴かなかったのに、サンパウロ州の豪雨被害では、同州知事候補に据える予定のタルシジオ・インフラ相らを伴い、1月30日に視察を行ったドリア知事の向こうを張るかのように出かけた。
ボルソナロ大統領は翌2日も連邦政府のイベントで、「独裁政治というのは政府が行うものだが、この国では政府がベネズエラのような独裁国家にならないように尽くしているのに、他の権力がそうさせてくれない」と語り、最高裁を皮肉った。大統領はこのイベントで、大統領選支持率で自身をリードしているルーラ元大統領への批判も行っている。
2日、連邦警察は選挙高裁へのハッカー攻撃捜査の情報漏洩に関する捜査結果を発表。最高裁での同件担当者のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に報告書を提出した。
連警は大統領とフィリペ・バロス下議(社会自由党・PSL)が守秘事項を漏洩した罪は認めたが、両者ともに不逮捕特権があるため不起訴とする判断を行っている。