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《ブラジル》下院が鉱物資源開発法案を緊急審議=先住民居住区の環境を破壊?=肥料原料確保のためと大統領

2022年3月11日

9日のカエターノ・ヴェローゾとパシェコ上院議長(Twitter)
9日のカエターノ・ヴェローゾとパシェコ上院議長(Twitter)

 【既報関連】下院で9日、先住民居住区での鉱物資源開発に関する法案を緊急審議にかけることが可決された。これはボルソナロ大統領がカリウムなどの肥料確保のための建前としたもので、連邦政府としては4月中に可決したいところだが、強い反対の声も沸き起こっている。9、10日付現地紙、サイトが報じている。
 9日に下院で審議された、先住民居住区での鉱物資源開発を認める法案の緊急審議要請は、下院政府リーダーのリカルド・バロス下議(進歩党・PP)が提案したもの。提案書には下議9人の署名も添えられていたが、その大半がボルソナロ大統領を支持している中道勢力「セントロン」の下議だった。
 アルトゥール・リラ下院議長(PP)も同法案には高い優先度を置く意向を表明しており、緊急審議要請に対する投票の前に、同法案に関する作業班の設置も発表した。同議長は、作業班の目的は、法案191号(PL191)と名付けられた今回の法案を「より良いものにし、効果的に法制化するため」としている。作業班は通常の委員会とは違い、議長団がメンバーを指名し、30日間で法案を練る予定だ。
 この日に行われた投票でも、緊急審議要請は279票対180票で可決された。リラ議長は、4月12~14日に全体投票にかけたいと考えている。
 バロス下議はこの法案に関して、「ボルソナロ大統領が2020年2月に提出した法案は、現行憲法を30年以上も遅れて標準化しようとしているだけだ」と主張した。

 先住民居住区の環境破壊につながりかねない法案の審議は国内外の強い批判の対象になりかねない。ボルソナロ大統領はそれに対して、「カリウムの鉱床」の存在を持ち出し、「外国に肥料を依存しなくて済むよう、鉱物資源の開発を肯定しよう」と主張している。
 カリウム肥料はロシアからの輸入への依存度が特に高く、ウクライナ危機により確保が危うくなっている。だからこそ、肥料の国内生産を増やすために先住民地域に豊富にあるカリウムの鉱床を開発する必要があると、大統領は主張している。
 だが、この主張に対しては、ミナス・ジェライス連邦大学が7日に「国内のカリウム鉱床で先住民地域に存在するのは全体の11%のみ」との研究結果を発表したりして、矛盾点を指摘している。
 こうした状況下で9日の投票は行われた。下院の外では審議の間中、先住民や環境運動家らによる反対運動が展開されていた。また同日、大御所歌手のカエターノ・ヴェローゾらがロドリゴ・パシェコ上院議長を訪れ、PL191の審議を上院で止めるよう嘆願書を出し、話題になった。
 下院唯一の先住民議員のジョエニナ・ワピシャナ下議(レデ)は、緊急審議承認を「嘆かわしい」とし、「これが経済問題の解決になると思ったら間違いだ。資源開発を進めれば、環境問題を懸念する投資家たちはブラジルへの投資から手を引くようになる」と警鐘を鳴らしている。
 PL191には資源開発の結果の報酬の行き先や、先住民居住区の破壊に伴う補償をどうするかなどの課題も付きまとっている上、本当の目的は金との声まで出ている。


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