《ブラジル》渋いルーラへの財界の反応=民営化反対などに難色=鍵は新アドバイザーか

大統領選支持率1位のルーラ元大統領の労働者党(PT)党首のグレイシ・ホフマン氏が4日、市場関係者とルーラ氏の経済プランについての会合を行った。グレイシ氏は民営化に反対し、投資で経済成長を伸ばす方法を訴えたが、市場関係者には不評だった。ルーラ氏側は39歳のエコノミスト、ガブリエル・ガリポロ氏を経済アドバイザーとして迎えている。5、6日付現地紙、サイトが報じている。
経済政策の市場関係者への受けは、大統領選を左右する大きな要素だ。2018年の統一選でも、シカゴ学派の経済学者として名高かったパウロ・ゲデス氏を経済相候補としてあげたことが好評で、過激なイメージを持たれ、拒絶率も低くはなかったボルソナロ氏の財界での支持が上がり、大統領選で有利になっていた。
グレイシ氏はエスフェラという団体が主催した、財界との夕食会に出席した。左派のルーラ氏はPT政権時代から財界の受けは決してよくなかったが、この会合は、そうした財界の空気を和らげようとしたものだった。
だが、結果は財界の疑念をかえって高めるものとなった。グレイシ氏はここで、電力公社のエレトロブラスをはじめとした公社の民営化に反対の意向を示したのだ。
グレイシ氏は「現在、投資は国内総生産(GDP)の14%まで縮小している。それは公社が次々と売りに出され、投資を呼び込む対象ではなくなってしまっているからだ」として、投資促進による経済成長を唱えた。
グレイシ氏はまた、ペトロブラスが2021年に高収益をあげたことに対しても批判的な立場をとった。同氏は、ルーラ氏が政権を取った暁にもペトロブラスの価格政策には干渉しないとする一方、現在の相場変動性を変えたいと発言した。
だが、グレイシ氏の意見は財界からの賛同を得ることはできなかった。参加者の中には、「良かった点は、ルーラ氏には労働改革を反古にする意向がないということと、2024年まではカンポス・ネット氏に中銀総裁を続投させるとしたことだけだ」と語る人もいた。
参加者の印象では、「PTが過激な政策をやろうとしている」と解釈した人も少なくなかったようだ。PT政権時代、ジウマ氏の経済政策の財界受けが悪く、それが大統領罷免の間接的な圧力につながったとも言われており、同日も参加者からはジウマ政権への批判が飛び出した。グレイシ氏はそれに対して、「ジウマ氏は当時、連邦議会の反対にあって苦しんでいた」と返答していた。
この日、グレイシ氏が帯同させていたルーラ氏の新たな経済アドバイザーの存在が注目された。それがガブリエル・ガリポロ氏だ。同氏は39歳と若いが、2017〜21年にファトール銀行の総裁を務め、現在はサンパウロ工業連盟(Fiesp)の相談役も務めている。同氏はこの日の会合でグレイシ氏の発言を市場向けに緩和する役割を果たしていた。
同氏は財政支出上限に懐疑的で、南米統一通貨に賛成などの経済論で知られている。