site.title

小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=125

2024年4月17日

 この雑事をうまく裁くには独りでは無理である。娘は勉強が忙しいと言う。お手伝いは、少し余分な仕事を命ずると、すぐに暇を取りかねない。店の小僧ときては、口がすっぱくなるほど説明しておいても、二つに一つはへまをする。結局、私が自分でやるより他はない。時には憂さ晴らしに、どこかで思い切り散財し、遊んでみたくもなるのだが、誘い合う友人もいない。ふっと、妻がいたら、と思ったりすることがある。

 秋野朋子から便りがあった。突然お邪魔し、失礼しましたという礼状だった。間もなく、もう一通配達されてきた。次のような文面だった。
 ――貴男が新聞に発表された亡き奥さんを詠んだお歌を...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...