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ブラジル日系社会=『百年の水流』(再改定版)=外山脩=(384)

2026年4月18日


 対してウニバンコ側は、中銀のPROER=民間銀行救済計画=の適用を申請するよう求めた。しかる後に合併しよう…と。そうすれば、ウニバンコの資金負担が軽くなるのである。

 しかし、その場合、中銀の言うなりにならねばならない。南銀側は交渉を打ち切った。

 直後、その事実が外部に漏れた。ウニバンコの担当者が、断られた腹いせにリークしたという。

 本章の初めの所で記した「噂」が広まったのは、これ以降のことである。

 南銀は新しい買い手探しに懸命になった。三月初旬、交渉相手の一つスダメリスから「第三者にオファーしないでくれ」と連絡が入った。

 そして四月三日、経営権移譲の仮契約が結ばれた──という次第である。

 スダメリスは、欧州系の銀行で、ブラジルの現地法人(バンコ・スダメリス・ブラジル)は、一世紀近くの歴史を持つ中堅銀行だった。

 

 何故?

 

 ところで中銀は何故、こんな奇襲を南銀に仕掛けたのか?

 無論、それには、それなりの裏面があった。

 当時、銀行の多くは──前章までに記した超ハイパー・インフレ下の狂騰金利の中で──数字上は高利益を上げていた。

 しかし、その狂騰金利は、融資先の多数の企業の財務を破綻させていた。結果として対銀行債務の返済が不能となる企業が激増していた。コチア、スールの場合と同じである。

 ために、銀行には焦げつき債権の書類が、ゴミの山の様に堆積中だった。

 数年前まで、数字上は儲けに儲けていた銀行は一転、そのゴミの山に埋もれかけていた。(南銀の場合、レアル・プラン以降、積極・拡大策をとったのも、却って拙かった) 

 対して中銀は、銀行界の大切開手術に踏み切った。一九九五年からのことである。

 手術は政府系から民間まで、大半の銀行を対象とする大がかりなものとなった。

 例えば連邦政府経営、国内最大のバンコ・ド・ブラジルに対してすら、内部に隠していた不良債権を表面化させ、巨額の赤字を計上させた。

 州立銀行も、その殆どに荒療治を施した。前章で触れたことだが、州銀はどこも、政治資金づくりに利用され、ボロボロになっていた。

 代表的ケースがコチアに対する大型の不良債権を抱えていたバネスパである。

 中銀は、これら州立銀行を一旦国営化した後、片端から売り飛ばした。

 民間銀行も、次々と他行へ身売りさせた。

 その買収を、外国銀行にも、手伝わせた。

 さらに、すべての銀行にコンピューター化を急がせた。

 BIS規制を武器に、自己資本比率を引き上げさせた。

 中銀が本気で、こういう荒業に出ることに、逸早く気づいていたのが、民間銀行の大手である。

 その大手は、中銀の要求に積極的に応じる策をとった。身売り銀行の受け皿になった。コンピューター化を急ぎ、行員三〇人でやっていた作業を五人で片づけた。自己資本比率を引き上げ、BIS規制をクリアーした。

 もっとも、ブラジルの民間銀行で大手といえるのは、ブラデスコとイタウーのみであった。

 これに次ぐ準大手が、ウニバンコなど七行あったが、内五行は資金力が劣り、中銀の要求に応ずることができず、相次ぎ身売りに追い込まれた。

 次の通りである。(左が身売り銀行、右が買収銀行)

 ● 一九九五年

 ナショナル→ウニバンコ

 ● 一九九六年

 エコノミコ→エキセル

 ● 一九九七年

 バメリンドス→HSBC(英国)

 ● 一九九八年

 レアル→ABN・アムロ(オランダ)

 エキセル→ビルバオ・ヴィズカヤ(スぺイン)

 残るはウニバンコとメルカンチール・デ・サンパウロのみになった。

 準大手に次ぐ中堅グループ八行は総て、他行に経営権が渡った。

 ● 一九九五年

 バノルテ→バンデイランテス

 ● 一九九六年

 イタマラチー→BCN

 ● 一九九七年

 バンデイランテス→CGD(ポルトガル)

 ジエラルド・コメルシオ→サンタンデル(スペイン)

 ボア・ビスタ→エスピリット・サント(ポルトガル)

 ノロエステ→サンタンデル

 BCN→ブラデスコ

 ● 一九九八年

 南米銀行→スダメリス

 このランク以下も、身売り・買収が大量に行われた。(ブラデスコ、イタウーが受け皿になったのは、このクラスであろう)

 かくして、僅か数年の間に、銀行界の地図は一変してしまった。

 以上を、中銀の銀行界再編成政策による……と解説するのは簡単だが、余りにも大規模で急激すぎた。

 無論、スムーズに進んだわけではない。(つづく)


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