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ブラジル日系社会=『百年の水流』(再改定版)=外山脩=(378)

2026年4月10日


 コチアも自主解散

 

 一九九四年九月三十日、コチアは再び臨時総会を開催、同産業組合中央会の自主解散を決定した。創立から六十七年目に当たった。

 総会には、単協代表一五〇人が出席していたが、割合、平静であった。これが解散総会であることが、事前に知らされていたからであろう。

 それとスールと同様、中央会は解散しても、単協と事業所は残すので、組合もコチアの名も存続、時機が来れば、新しい中央会を組織できる…つまりお家再興の可能性もあった。

 解散総会は、ケイロウたち審議役三人を、清算人に選出した。

 法律顧問は、スールと同じモジの弁護士事務所に委託した。

 総会には、ゼルヴァジオも出席、最前列の席に腰掛けていた。五月の組合瓦解の表面化の直後、医師から絶対安静を指示され、自宅で静養していたが、この頃にはある程度回復、組合にも顔を出していた。

 総会終了後、何も語らず、人目が集中する会場の入口を避け、裏の出口から帰って行った。

 

 お家再興、成らず

 

 スール、コチアとも、中央会解散後の目的は「資産の売却、負債の消去」「単協の自主採算性による事業継続」そして「中央会の再組織…お家再興」となった。

 しかしながら…である。

 スールの場合、解散後わずか三カ月ほどで「資産の売却、負債の消去」の目論見は、大きく狂った。

 これは次の様な理由による。

 清算人が、資産売却に着手して間もない一九九四年七月、カルドーゾ蔵相による新経済政策「レアル・プラン」が発表された。均衡財政、為替の変動相場制などを取り入れたオーソドックスな内容であった。

 通貨の呼称はレアルに変更された。為替レートは一ドル=一レアルでスタートした。

 均衡財政とは、国債の乱発を止めるということで、これで超ハイパー・インフレも、金利狂騰も収まるであろう。

 が、大変な緊縮財政になる筈であった。

 これに、ただならぬ気配を感じ取った経済界では「総ての業界が総てを洗い直した」といわれる。その結果、不動産業界では、市場は完全に冷え込む…と業者たちは気づいた。

 それが不動産価格の大暴落を招いた。

 スールの資産は殆どが不動産であったから、直撃された。市場価格は半分、三分の一になってしまい、しかも、その値で売り出しても、買い手がつかなかった。ために負債の消去は全く進まなかった。

 なお負債額は、その後、改めて計上された資料では合計三、六〇〇万㌦となっていた。内訳は次の通り。単位は㌦。

 税金滞納分=五〇万

 対銀行債務=三、一三〇万

 JICAからの借入金=二五〇万

 フォルネセドールへの未払い分=一〇〇万

 組合内預金の未払戻し分=七〇万

 この内、債権銀行は計十行で、大口は南米銀行の一、八〇〇万とバネスパの一、一〇〇万、小口がバンコ・ド・ブラジルの一五〇万、その他計八〇万となっていた。

 フォルネセドールつまり資材・サービスの供給業者は約二百社。一社当たりの金額は大きなものはなかった。

 組合内預金は、預金者は大部分が組合員で六八〇人。これも一人当たりの金額は小さかった。

 以上の内、債権銀行は、清算が進まないため、その全てがスールを相手取って訴訟を起こした。殆どが民事であったが、刑事も少しあった。

 民事では、融資を受けた時点で、富森理事長と笠原専務が裏書きしており、個人的にも提訴された。この二人は刑事でも告訴された。

 債権者の中のフォルネセドールは、二百社中の十社が提訴したに止まった。

 こうした場合の各種の負債は、法的に支払いに優先順位が決まっていた。フォルネセドールの場合は下位の方で、提訴しても債権回収の見込みはなかった。ために経費分だけ損になるという判断から、殆どが放置したのである。

 一九九五年も、不動産市場は好転しなかった。

 清算人は、仕事がなく、清算業務のため再雇用した従業員に次々「辞めてもらって…」いた。

 しかし、今度は、その退職金の支払いも遅延するという有り様だった。

 経費は、組合の車や電話を売ったり、地方の施設を単協に賃貸したりして賄っていたが、不足しがちだったのである。

 一九九六年二~三月、南銀に抵当(組合本部、農事試験場など)を引き渡して、その負債を消した。

 バンコ・ド・ブラジルとの間でも同様の処置をとった。

 が、それ以外の負債の消去は進展しなかった。清算人の任期は二期目に入っていた。 

 解散時、二十五カ所あった単協は、自立の道を歩み始めたが、翌年には早くも閉鎖する所が出ていた。同年二カ所、九六年三カ所…という具合だった。(つづく)


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