ブラジル国籍者が日本刀で少年刺殺=英ロンドン住宅街で襲撃事件

「はやくドアに鍵をかけろ!」――英国ロンドンの閑静な住宅街に、緊迫した声が響いた。男が日本刀を振り回し、無差別に通行人を襲う事件が発生し、14歳の少年が死亡、警官2人を含む4人が負傷した。現場付近の住宅街で日本刀を手にうろついていたブラジル国籍の男マルクス・アルドゥイニ・モンゾ容疑者(36歳)を警察が逮捕したと2日付BBCブラジルなど(1)(2)が報じている。
1日午前7時頃、同市北東部のヘインオルト地区の地下鉄の駅近くの敷地に、一台のバンが突っ込んだ。その際、33歳の男性がバンに轢かれ、バンから出てきた容疑者に襲われて首を負傷。その後容疑者は、近くの住宅内で別の35歳男性の腕を切りつけ、さらにダニエル・アンジョリン君(14歳)に襲いかかった。彼はすぐに病院に搬送されたが、死亡が確認された。
ダニエル君の近所に住むエイステさんは、「ダニエルが家から出てきたとき、私たちは大声で叫び、手を振って危険を知らせたの。でも彼はヘッドホンをしていたから気づかなかった。悲惨なことが私たちの目の前で起こってしまった」
現場に駆けつけた警官2人も襲われ、1人は腕を切りつけられ、手術を必要とする程の重症を負ったという。
モンゾ容疑者は同市東部のニューアム地区在住で、自らをアマチュア・ミュージシャンで「神秘主義者」だと語っていたという。ロンドンを拠点とする会社の取締役を名乗っていたが、その会社は現在廃業となっている。
事件の数週間前には「悪政に苦しむ民衆を助けた正義の味方」といわれるロビン・フッドの格好をし、弓矢を使ってトレーニングする動画を自身のSNSに投稿していた。
モンゾ容疑者の隣人によると、彼は「物静かで、控えめで、いつも礼儀正しい人」という印象を持っていた一方で、「他人との接触があまりなく、孤立している様だった」と語った。
容疑者は殺人、重傷傷害、刃物不法所持の疑いで拘束されており、すでに証拠を提出し、裁判は7日に開始される。犯行動機については、機密扱いとなっている。
死亡したダニエル君が通っていた学校の教諭は、彼は「とても勉強熱心」で「前向きな性格で親切」だったと声明を発表。「このような若い生徒を失うことは我々とって受け入れがたい」と悲痛な胸の内を語った。
英国では刃物による犯罪が増加の一途を辿っている。野党の保守党が、労働党の現ロンドン市長サディク・カーン氏の治安対策を厳しく批判しており、事件が地方選挙の2日前に起こったことも注目されている。