エルサルバドル憲法改正容易に=独裁政権への一歩との批判も

中米エルサルバドルでは、殺人発生率を46分の1にするなど〝世界一クールな独裁者〟とも呼ばれるナジブ・ブケレ大統領に忠実な議員で固められた国会が4月29日、憲法改正をほぼ他の権力の制約なしに行うことを可能にする改正法案を可決した。この措置は反対派の弁護士、アナリスト、活動家たちから「独裁への一歩」であり、再選挙の回数制限の終焉であると批判されたと1日付オ・グローボ(1)が報じた。
同国憲法では、憲法改正はいったん議会で承認された後、その条文を国民投票に付すプロセスが必要と定められている。その後、選挙を経た新議会の任期中に再度承認されなければならない。ところが新条文では選挙で選出された下議の3/4(60人中45人)によって、同じ議会で改正を承認できる。ブケレ氏の新思想党は現在60人中54人の下議を擁している。
この改革案は4月29日に終了した前回議会の議事日程には含まれていなかったが、ブケレ氏の支持議員らは議題を変更するために会議を中断した。これは、ブケレの要望を満たすために過去3年間頻繁に使用されてきた「審議なしで処理を免除する」という手続きによって採決された。
この法改正により、ブケレ大統領の同盟者が多数を占める国会は、何度でも憲法を改正する権限を持つことになった。この新手順では大統領が任期を延長し、市民の権利を抑圧し、無期限の再選に道を開く可能性があるとの恐れを引き起こしている。
政治アナリストで元ゲリラ指導者のエウヘニオ・チカス氏はAFP通信とのインタビューで「この国は権力集中を強め、独裁的体制の強化に向かっているようだ」と語った。
一方、政治アナリストのカルロス・アラウホ氏は「大統領は、誰もがバランスをとることなく、望む措置を推進する自由がある」と指摘している。与党のエルネスト・カストロ議会議長も「248条のうち、政府の形態と制度に言及している部分には触れていないし、改革もしていない」と述べ、この改革を擁護した。
だが11の市民団体は、この改革が権力集中を招き、国民を「国家による虐待」にさらすことになると考え、懸念を表明している。例えばNGO団体「イニシアチーバ・ソシアル・パラ・ア・デモクラシーア」のラモン・ビジャルタ氏は「承認された憲法改正は民主主義を弱体化させ、法の支配を弱体化させ、国の民主的制度も弱体化させる」と話した。
野党バモス党のクラウディア・オルティス副党首は、ブケレ氏に味方する議員を批判し、「自分たちを権力の座に置き、権力の限界をなくしている」と非難した。「これは国民に対する裏切りであり、彼らは恥を知るべきだ(中略)我々は、権力を握っているグループの気まぐれで統治されているのだ」と語った。
一方、カストロ議会議長は「これはエルサルバドルの人々の要求であり、ものごとを変え、この国を再建することだ」と強調した。