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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=149

2024年6月5日

「お前も意外と常識人だったんだな。ジョンの方が一枚上か」
「あ奴の遣り方は、狂気の沙汰だ」
「以前の話のタニアとかいう娘とは違うのか」
「別だ。タニアのことは、この前ジョンの口から聞いた通りさ」
「それでお前、ヌイナとはどうしたんだ」
「ジョンが、たんまり出すから井戸掘りを手伝えというので耕地を去った。後のことは知らん。ジョンがものにできなかったのは確かだ」
 
 ジョンはその日、夜が更けても帰らなかった。二日、三日と過ぎた。もはや彼は、アラポアンやカラムルには義理にも行けない筈だ。としたら何処へ行きやがったんだろう。田守は舌打ちした。いやもう、そんな...

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