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小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=152

2024年6月8日

「なるほど、能書きは不要だ。味で解る」
「お前、暑苦しい格好だ。そのシャツを脱げよ」
 ジュアレースも半裸になった。金色の毛が胸を覆っている。平均気温三十五度というこの地方では、半ズボン姿が自然だ。恰幅のいい中年男が、強い酒を酌み交わしている。脂ぎった体臭が入り混じって、野獣に近い匂いを放っていた。
「運のいい日だな、もう一杯もうらぜ」
「いいとも、自由にやってくれ」
 ジュアレースは自分のコップに酒を注ぎたし、いい酒だ、としきりに褒める。田守も飲み続けた。
「田守、お前には日系人らしいところが少ない」
「それが、どうだと言うんだ。お前の祖先だってポル...

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