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小説=「森の夢」=ブラジル日本移民の記録=醍醐麻沙夫=17

2024年8月7日

 一応の要領を見届けてから、人々は家族毎に定められた畝に散っていった。樹が茂っているから見通しは利かないが、どの畝にも人が入っていた。すでに仕事を始めているイタリヤ人やスペイン人やポルトガル人の娘たちは、コーヒーの実を摘みながらひっきりなしに唄っていた。彼女たちは澄んだ声をしていた。牧歌的な雰囲気と気ぜわしい活気がみなぎっていた。
「おれたちも唄うか」
 誰かが意気込んでラッパ節を唄いだした。しかし、ラッパ節は酒を飲んで唄うにはいいが、ここではピッタリしなかった。
 唄いやめると「カンタ・ジャポン」(歌え、ニッポン)とどこからか声が掛ったが、何を言われているの...

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