日本発の環境型農業=注目の「ヤマカワプログラム」(10)=イビウーナのヨシズミさん農園

ヤマカワプログラム一行は24年11月30日、視察行の締めくくりとして、イビウーナ市で農業を営むヨシズミ・マサミさん(61歳、2世)の農園「シチオ・ノヴォ・ムンド(Sítio Novo Mundo)」を訪問した。
同農園はマサミさんの父マサルさんと母シノブさんが1964年に土地を購入し、畑作を行ったところから始まった。末っ子のマサミさんは農学者として大手農業会社に勤務した後、1989年から農園の経営に参加した。
同農園では、オリーブや白菜、エシャロット、キャベツなど多様な野菜を育てており、その敷地の広さは87ヘクタールにも及ぶ。その内45ヘクタールは、オーガニック栽培農地だ。
農園では、2021年3月からヤマカワプログラムを試験的に実施し、現在は農園全体で実施しているという。
ヤマカワプログラムジャパンの船戸知樹さんは同農園のオリーブの木やリーキ(ポロネギ)、西洋ほうれん草(Espinafre)、ケール(Couve manteiga)畑などの土の状態を確認した。
オリーブ畑の土壌にはしっかりとした団粒構造が確認され、船戸さんは、「団粒構造が形成され、微生物にとって素晴らしい環境がそろいつつあります」と評価。一方で、オリーブ栽培の空き場所を利用して行われていたキャベツ栽培については「空き場所でのキャベツ栽培は非常に効率が良いと思います。でもその場合はロータリーで土を掘らないほうが微生物にとっていいので、使用するのであればできるだけ浅いところで栽培したほうがよいでしょう。天地返し(畑の土を掘り起こし下層土と入れ替える作業のこと)は微生物にとって最悪な環境を作ることになりかねないのでお勧めしません」とアドバイスした。
ケール畑の土中確認では「団粒構造がくっきりと見えず、土も少し臭いがします。ヤマカワプログラム以外に何か菌を土に直接いれたりしていませんか?」と指摘。マサミさんから、土に自社で培養した菌を混ぜ込んでいることを聞くと、「基本的にヤマカワプログラムでは『これをしてはいけない』という強制的な指導はしません。ですが、この方法を試すのであれば、ある程度自然に任せたほうがいいと思います。必要以上に土に栄養を足すことが原因で栄養過多になり、結果的に微生物に良くない環境が生まれることもあるので、注意してください」と指導した。
船戸さんは、視察の最後に「山川先生は生前、マサミさんは弟子だと言っていました。今日の視察では、もし山川先生なら弟子にこう言うだろうと思いながら厳しめな指導をしました。ぜひ今まで以上に土壌環境を良くして、よりよい作物を収穫できることを期待しています。頑張ってください」とマサミさんを激励した。
マサミさんは、「ヤマカワプログラムのおかげで土壌改善が大幅に進み、作物も良いものが採れるようになりました。船戸さんから頂いたアドバイスや言葉を胸に、これからもヤマカワプログラムを実践していきたいと思います。ありがとうございます」と深謝した。