ルーラ=日本との貿易で60億ドル回復目指す=牛肉解禁とエネルギー協力強調

【既報関連】国賓として日本を訪問中のルーラ大統領は25日、皇居で天皇・皇后両陛下に迎えられた後、ブラジル食肉輸出業者協会(Abiec)の企業家たちとの会合に参加し、ブラジル産牛肉の日本市場への進出を目指す取り組みについて議論を交わした。ルーラ大統領は、日本に対してブラジルの優れた商品を売り込むための「扉を開くことが自身の役割だ」と強調し、エタノールやインフラなどの分野での協力拡大にも意欲を示したと同日付のブラジル247(1)が報じた。

ルーラ大統領は会合の中で、経済活動の主導権は大統領や議員ではなく、企業家たちにあると強調した上で、ブラジルと日本の貿易関係における潜在的な可能性について言及。2011年の両国間の貿易額は170億ドルに達していたが、24年は110億ドルに減少していることを指摘し、「この訪日を機に、まずはその差額の60億ドルを取り戻すことが目標だ」と述べ、貿易関係の回復に向けた意欲を示した。
エネルギー分野では、大統領はブラジルが進めるエタノールの生産拡大について言及。ブラジルはガソリンへのエタノール混合比率とディーゼル油へのバイオディーゼル混合比率をそれぞれ30%に引き上げることを検討しており、日本がガソリンに10%のエタノールを混入して使用するようになれば、ブラジルにとっても大きな進展となると語ると共に、日本との協力は、ブラジルでのエネルギー転換の進展と共に、低炭素社会の構築に貢献できるとの認識を示した。
会合に参加したカルロス・ファヴァロ農務相は、ブラジルの畜産業は日本の衛生基準や商業基準を満たす準備が整っていると述べ、特にブラジル産牛肉の日本市場への進出を目指す取り組みが進展していることを報告した。日本に対するブラジル産牛肉の輸出解禁については、過去20年以上にわたり、交渉が続けられており、ルーラ大統領の交渉参加は決着に向けた決定的な好機と指摘。また、ブラジル産豚肉や鶏肉の市場拡大も進めており、ブラジルが競争力を発揮できる分野だと強調した。
同相はまた、ブラジルは過去2年間で世界中に344の新しい市場を開拓したことに言及し、「ブラジルが世界にとっての食料供給国となり、食の安全性を確保してきた証だ」と述べた。さらに、ブラジルは鳥インフルエンザの発生がない数少ない国であり、「世界で消費される鶏肉の40%を供給し、品質、安全性、競争力のある価格を提供している」と強調した。
一方、レナン・フィーリョ運輸相は、ブラジルが輸出力を拡大するためにはインフラの強化が不可欠であると強調。ブラジルの輸出コストは他国と比べて非常に低く、米国は肉15キロの輸出に100ドル以上かかるのに対し、ブラジルでは55ドル程度で済むことを例に、ブラジルの輸出力の強みをアピールした。また、ブラジルの輸出基盤は強力で、エネルギーや鉱物資源に加え、食料品という重要な分野でも競争力を有していることを指摘した。
他方、シルヴィオ・コスタ・フィーリョ港湾空港相は、ブラジルが物流インフラを強化してきた例として、「1990年代まで輸出のほぼ50%がサントス港を通じて出荷されていた。現在、この割合は約30%まで落ち、この数字をさらに減らして北部、北東部、中西部地域での物流を拡大し、生産物出荷を分散化するための大規模な国家計画を作成するつもり」と強調した。さらに、24年は港湾の貨物取扱量が18%増加したことを報告し、鉄道や道路、水路から港湾の全てで、生産物の輸送効率向上のために投資を強化していると説明した。