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最高裁=違法投稿削除を義務化=プラットフォームに責任=ネット基本法に違憲判決

2025年7月10日

最高裁(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)
最高裁(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agencia Brasil)

 最高裁は26日、SNSの責任を規定したインターネット基本法第19条は部分的に違憲であるとの判断を判事投票8対3で下した。これにより、「ビッグ・テック」と呼ばれるネットのプラットフォーム大企業は、ブラジルにおける基本的人権や民主主義に反する違法投稿に関し、削除を行う義務的責任を負うことになる。同日付アジェンシア・ブラジルなどが報じている。(1)

 同件の審理は昨年12月に始まり、6回の審理を経て、26日にようやく決審した。審理内容は、2014年に制定されたインターネット基本法に関連する二つの訴訟に関するもので、基本的人権や民主主義に反する投稿に対するビッグ・テックの立場について審理が行われた。
 昨年12月5日と11日に、報告官を務めたジアス・トフォリ判事とルイス・フクス判事はそれぞれ、インターネット基本法第19条が定めている「裁判所による問題投稿の削除命令に応じなかった場合にのみ、プラットフォームに法的な責任を負わせる」ことは憲法違反にあたるとし、司法通知によるコンテンツの削除を規定した同法第21条に従うべきだとの見解を示していた。
 それに対し、ルイス・ロベルト・バローゾ長官、カルメン・ルシア、アレッシャンドレ・デ・モラエス、ジルマール・メンデス、フラヴィオ・ジノ、クリスチアーノ・ザニンの各判事が賛同を示し、賛成が8票で過半数となった。
 これに対し、アンドレ・メンドンサ判事が6月5日の審理で、現行のインターネット基本法の合憲性を主張した。同判事は、裁判所の命令にプラットフォームが応じなかった場合、プラットフォームはその投稿にのみ責任を負うべきであり、偽のプロフィールやボット以外のアカウントの削除に反対。SNSの規制は司法ではなく、議会が行うべきだと主張した。これにエジソン・ファキン判事、カシオ・ヌーネス・マルケス判事が賛同を示し、反対票は3票となった。
 この結果、ブラジルでは「プラットフォームは裁判所の命令に従う法的責任があり、投稿削除を義務とする」ことが法的に結論付けられた。これにより、インターネット基本法第19章は「基本的人権と民主主義を保証するものではない」との判断になり、この問題に関する新しい法律が承認されるまで、プラットフォームは投稿に関して民事責任を負うことになる。(2) (3)
 ブラジルでは2018年の大統領選以降、ネットによるフェイクニュース拡散や、反基本的人権や反民主主義的な投稿が問題とされ、アレッシャンドレ・デ・モラエス判事が最高裁内の「フェイクニュース」「デジタル犯罪」の報告官として、対策にあたってきた。
 だが、捜査対象とされたボルソナロ前大統領の関係者や支持者たちが、「表現の自由」を主張。投稿内容の検閲行為にあたるとして対立を続けたが、2023年1月8日に三権中枢施設襲撃事件が起こったことで、改めて深刻に捉えられるようになった。
 モラエス判事はプラットフォーム「X」で違法な投稿を行い続けた極右ジャーナリストの逮捕を命じたが、それに対し、Xの社主イーロン・マスク氏が「表現の自由に対する迫害」を主張して投稿削除に強硬に反対。それが2024年9月の約1カ月にわたるブラジルでのXの運用停止へと発展し、国際的にも知られる問題となった。
 今回の最高裁判決は、ブラジルにおけるSNS上の投稿内容監視やプラットフォームの法的責任に関する法的基準を固めたものとなった。


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