サンパウロ州=EV充電に新安全基準=防災設備の設置義務化

電気自動車(EV)の急速な普及を受け、サンパウロ州政府と消防、自動車メーカー各社が共同で、EVの安全な充電環境整備に向けた新規則案を策定した。リチウムイオン電池特有の火災リスクを踏まえ、新築建物のガレージには自動散水装置(スプリンクラー)や排気システム、熱および煙の検知システムの設置が求められる。一方、既存の建築物に対しても、構造に応じた適切な規則が用意される見込みだ。今回の規制は国内外で実施された実証実験を基に作成され、7月中にも正式発表が見込まれていると3日付フォーリャ紙(1)が報じた。
同規制策定の背景には、充電設備設置時に適切な安全基準が存在しなかったことによる、マンションの地下駐車場などでの火災リスク顕在化の問題がある。消防当局は、必要な安全要件を満たさない場合、充電器設置のための許可を拒否する権限を保持する。
当初は、リスク緩和策として、各駐車区画の間に5メートルの距離を確保する案や防火壁によって充電スペースを個別に隔離する案が提示されたが、自動車業界や建設業界が強く異議を申し立てたため、最終的に不採用とされた。
今回策定された新規則案は、このような動きを受け、ブラジル電気自動車協会(ABVE)と消防当局は共同で実証実験や国際的な技術研修を行い、最適な安全対策策定を目指した結果だ。最たる懸念はバッテリーの構成要素が有する特性に起因し、火災発生時の消火手段確立に重点が置かれた。
EV用のリチウムイオンバッテリーは火災時に激しい炎を発生させ、消火活動を難しくする。この点に関しては複数の手法が議論されており、今後発表される規則に盛り込まれる予定だという。
最新の実証実験では、中国大手のBYD社が独自開発した「ブレードバッテリー」が釘貫通試験に耐えうる耐火性能を示すなど、現代の電気自動車は従来型に比べ、リスクが低減されていることが確認されている。
サンパウロ州大規模建設業協会(SindusCon‐SP)と消防はさらに、消防学校内にあるガレージ型実験施設で、実際に車両とバッテリーを燃焼させる試験を実施した。施設には最大550度までを計測できるサーモグラフィーや煙・一酸化炭素検知装置が備えられており、実験には約50万レアルが投じられた。
これらの実験結果をまとめた報告書は州政府に提出されており、関係各所は7月中の規則公布を見込むと同時に、他州への適用拡大についても期待を寄せている。ただし、全国消防指揮官会議(Ligabom)での議論は現在も継続しており、全国的な規制採用に関しては未だ最終決定に至っていない。