トランプ大統領=ブラジルに50%関税を通告=ルーラ、報復関税示唆=ボルソナロ迫害理由に

米国のトランプ大統領は9日、8月1日以降、ブラジルからの全ての輸入品に50%の関税を課すことを宣言した。トランプ大統領はブラジルがボルソナロ前大統領を迫害していることをその理由に挙げている。ブラジル政府はこの措置に対する不満をあらわにし、ルーラ大統領は50%の関税を報復的にかけることも示唆している。また、この措置の背後に前大統領三男のエドゥアルド休職下議の存在があると注目されている。
トランプ大統領は9日にルーラ大統領書簡を送り、「ボルソナロ氏とは面識や取引関係があり、他国の指導者たち同様、深く尊敬していたし、世界中でも尊敬されていた。そのボルソナロ氏に対するブラジル最高裁(STF)での裁判は国際的な恥辱だ。彼に対する(クーデター計画疑惑での)裁判は魔女狩りであり、不当なもの」「伯国は米国企業のソーシャル・メディアにも数100万ドルの罰金や市場からの排除を行ってきた」と前置き。そこで「分野別関係とは無関係に、全ての伯国製品に50%の課税を行う」とした。(1)
この声明を受け、連邦政府側は不満をあらわにした。ジェラルド・アルキミン副大統領やフェルナンド・ハダジ財相は「米国はブラジルに対して長年貿易黒字を記録ており、経済的にはこの課税を行う理由がない」との見解を示している。
外務省はブラジル駐在大使を2度も呼び出し、この書簡を米国大使に突き返すと、「攻撃的で受け入れられない内容だ」と言い渡した。
ルーラ大統領はこの日の19時56分にXで声明を発表。そこで「ブラジルは制度的に独立した法治国家で、統治権への干渉は誰からも受けない」「クーデター計画疑惑の裁判はブラジルのみで裁くことが可能で、いかなる威嚇も受けない」「ブラジルでは表現の自由と暴力の実践は混同されない」「過去15年間で米国は4100億レアルの貿易黒字を記録している」とし、貿易における相互的な平等というブラジルの貿易の原則から50%の関税を米国製品にかけることも示唆した。
今回のトランプ大統領の発表に関しては、下議を休職して米国に滞在中のボルソナロ氏三男エドゥアルド氏の存在があるとの見方が強い。エドゥアルド氏は同日午後9時6分、SNSサイト「トゥルース」にトランプ氏に対する英語の謝辞を投稿し、「伯国をベネズエラ、ニカラグア、キューバのようにはさせない」と語っている。
エドゥアルド氏は米国に滞在し、予てからボルソナロ氏に敵対していた最高裁のアレッシャンドレ・デ・モラエス判事に対して、米国内での資産差し押さえなどを規定したマグニッキー法などの適用を求めて働きかけていた。ブラジルの連邦警察は既に、エドゥアルド氏に対し、同件に関連した捜査を行っているが、この50%課税により捜査が強化される可能性が出てきている。
ボルソナロ氏自身は体調不良で公務を控えているが、同日20時59分にXで「正しい者が権力を得れば民は喜び、悪しき者が治めるとき、民はうめき苦しむ(口語訳)」との聖書の言葉の引用を行っている。(2)
ブラジル国内では、エスタード紙が「エドゥアルド氏が連邦議会に父親の恩赦を求める目的で大型課税を利用した」という記事を掲載して注目された。また、世界各国のメディアでも、トランプ大統領の措置を「攻撃的」「報復的」「個人的」と評価するものが目立っている。
他方、来年の大統領選への出馬が予想される親ボルソナロ派のタルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事やロメウ・ゼマ・ミナス・ジェライス州知事は、今回の50%関税はルーラ政権の責任との見方を示している。(3)(4)