【16日の市況】Ibovespaは前日比0.19%高の13万5,510.99ポイント=連続下落に歯止め USIM5が下落率上位に
ブラジルの株式市場は16日、方向感に欠ける展開のなかで小幅ながら反発した。米国との関税交渉や国内政治の動向をにらみつつ、個別銘柄の物色が続いた。中でも、GPA(PCAR3)の急騰が目を引いた一方で、ウジミナス(USIM5)は大手証券の格下げを受けて大きく売られた。
代表的株価指数であるIbovespaは前日比0.19%高の13万5,510.99ポイントで取引を終えた。取引時間中は13万4,265.3ポイントまで下げる場面もあったが、引けにかけて値を戻した。出来高は334億レアルに達し、同日はIbovespa先物オプションのSQ(特別清算指数)日でもあった。
通貨市場ではドルが小幅高 政策不透明感が重し
外国為替市場では、ドルがブラジルレアルに対してほぼ横ばいで推移した。米国がブラジル製品に最大50%の関税を課す可能性を示唆したことに加え、国内では政府と議会によるIOF(金融取引税)を巡る対立、さらに米連邦準備制度理事会(FRB)の指導部交代観測が広がるなど、不透明感が強まっている。
その結果、ドルのスポットレートは前日比0.03%高の1ドル=5.5611レアルで引けた。年初来では依然として10%程度の下落となっている。先物市場では8月物ドルが0.14%上昇し、5.5815レアルを付けた(サンパウロ証券取引所=B3、17時2分時点)。
Nomad社の投資専門家であるブルーノ・シャイニ氏は、「レアルのファンダメンタルズが大きく崩れているわけではないが、米国の金融政策の先行きやFRBの人事に関する憶測が、ブラジル国内での防衛的なドル買いを後押ししている」と述べた。
GPA急騰 ウジミナスは格下げで売られる
個別銘柄では、小売大手のGPA(PCAR3)が10.66%高と急伸。電動モーター製造大手WEG(WEGE3)も3.66%高と堅調だった。JPモルガンは報告書の中で、投資家が同社株の見直しを進めていると指摘。最近までWEG株は市場平均を下回るパフォーマンスにとどまっていた。
一方、下落銘柄では鉄鋼大手のウジミナス(USIM5)が4.52%安と大幅に下落。米ゴールドマン・サックスが投資判断を引き下げ、「複数の課題を抱えており、今後も厳しい展開が予想される」と警鐘を鳴らした。また、石油化学のブラスケム(BRKM5)も4.51%安と売られた。
トランプ氏、ブラジルのPixに照準 米国通商代表が調査開始
ブラジルの中央銀行が推進する即時決済システム「Pix」を巡って、米国政府が正式な調査を開始した。米通商代表部(USTR)は15日、同国の企業に不利益を与えているとして、Pixを含むブラジルのデジタル経済政策が「米企業の競争力を損なっている」と批判。9月には公聴会が予定されている。
USTRの文書によれば、米国側が問題視しているのは、Pixが政府主導で展開され、地元企業に有利な設計となっている点だ。米国の類似サービスである「Zelle」は一部の民間銀行が導入しているに過ぎず、利用拡大には限界があるとされる。
ブラジルではPixが2020年の導入以来、利用が急拡大し、既に登録ユーザーは1億7,000万人を超えている。クレジットカードやデビットカードといった従来型決済を脅かす存在となっており、VisaやMastercardといった米企業の市場シェアを奪っている構図だ。
USTRはまた、ブラジルにおけるデータ越境移転規制や、SNS運営企業への司法命令の厳格さも問題視。これらが米企業の正常な事業運営を妨げていると主張している。
ブラジルの経済専門家ファブリツィオ・ヴェロニ氏は、「米国の主張には地政学的な意図が透けて見える。BRICS諸国によるドル以外の新たな基軸通貨構想への警戒感が背景にあるのではないか」との見方を示す。
米国は今年4月にもインドネシアの即時決済システム「QRIS」に対し同様の批判を展開し、最終的には輸入品への関税引き上げという圧力を加えた経緯がある。今回のブラジルへの対応も、その延長線上にあるとみられる。
IOF増税巡る対立続く モラエス判事が一部復活認める
連邦最高裁(STF)のアレシャンドレ・デ・モラエス判事は16日、ルーラ大統領が署名した金融取引税(IOF)に関する大統領令のうち、一部の効力を復活させる判断を下した。ただし、企業間取引で発生する「リスクサカド(取立依頼リスク)」への課税部分については無効とする判断を維持した。
このIOF増税を巡っては、議会が大統領令を一部取り消す法案を可決していたが、モラエス判事は「憲法に即した解釈が必要」として、一部のみを有効とした。
判事はまた、「大統領令は法律の枠を超えて規定しており、立法府がその越権行為に対して立法措置を講じるのは憲法上認められている」との立場を示した。
政府と議会の間では、税制運用の主導権を巡る緊張が続いており、今回の判決はそのバランスを再調整する動きとも受け止められている。