1万2千㌔先から精密手術=世界最長の遠隔医療成功
1万2千キロ離れた中東クウェートから、ブラジルの患者に遠隔ロボット手術成功―。超高速通信システムで結び、ブラジル人医師がロボットによる遠隔手術を実施し、鼠径(そけい)ヘルニア治療を成功させた。これにより、世界最長距離での遠隔手術としてギネス記録に登録された。通信の遅延はわずか0・194秒で、先端通信技術と精密外科手法の進歩に支えられた今回の手術は、ブラジル医療が新たな段階に踏み出したことを示すと21日付G1など(1)(2)が報じた。
手術は9月23日、パラナ州クリチバ市にある赤十字病院で行われ、ブラジル人医師レアンドロ・トッティ・カヴァッゾーラ氏が、クウェートのジャベール・アル=アハマド病院から遠隔操作で執刀した。同氏によると、手術の第一の目的は「安全かつ実施可能であることを、研究・教育環境で確認すること」だった。手術中は通信遅延を常に0・194秒以下に維持でき、安全性が確保された。
この手術は、ブラジルの患者に対する遠隔手術としては初めての事例であり、世界で記録されているロボット遠隔手術の距離においても最長。
同日、これとは逆に、クウェートの医療チームがクリチバ市からクウェートの患者を遠隔手術する試みも実施された。両手術は安全に成功し、世界初の双方向ロボット遠隔手術の実例として記録された。
手術に用いられたのは、エッジ・メディカル社の最新鋭ロボット手術モデル「MP1000」だ。ロボットは「患者側」と「医師側」の2台に分かれ、医師は手元のジョイスティックのようなレバーで操作して手術を行った。遠隔操作でも正確に動かせるよう高精度の信号処理システムが導入され、通信は国内接続を担うリッガ・テレコムが、病院とデータセンターを超低遅延で結んだことで、安全かつスムーズな遠隔手術が可能となった。
カヴァッゾーラ氏は、今回の遠隔手術について「将来的には、高度な症例でも遠隔で同僚の医師を支援できる可能性が開ける。専門医の医療行為がより広範な人に提供できる」とコメント。
一方、今回の取り組みを企画・統括したスコーラ外科トレーニングセンターのマルセロ・ロウレイロ医師は、「双方向での連続手術が成功したことで、再現性と信頼性が証明された。遠隔手術は、実験的デモンストレーションから臨床現場で実践可能な手法へと進化し、専門医療へのアクセスを根本的に変えるものだ」と評価し、世界の医療に新たな時代をもたらす成果であると述べた。
この技術はブラジル国内でも応用され、10月6日にはブラジル市の医師ラファエル・フェレイラ・コエーリョ氏が、リオ・グランデ・ド・スル州ポルトアレグレ市にいる73歳の前立腺がん患者を対象に、完全な遠隔ロボット手術を成功させた。(3)この手術は患者の体に大きな切開をせずに行う「低侵襲手術」として実施され、医師が遠隔で操作する手の動きはロボットの腕に正確に伝わった。微細な手ぶれが自動で補正されるため、より精密な手術が可能だという。
手術前には音声、カメラ、ロボットの位置など全てのシステムが確認され、通信が途絶した場合には現地に待機する外科医が即座に手術を引き継ぐ安全体制も整えられた。
手術後、患者は入院期間が短く、術後の痛みも少なくて済んだという。コエーリョ氏によれば、この技術は前立腺だけでなく、胸部・腹部・頭頸部の手術にも応用可能であり、将来的には全国の患者が専門医の精密手術を受けやすくなると期待されている。ロボット手術では従来の手術に比べ、出血量の減少や術後の合併症リスクも低下する。その結果、回復の早さなど、患者にとって大きな利点があるという。









