アマゾン暮らしの極意聞く=日本語ガイド大塚喜吉さん=下=生きる知恵と未来への願い
ガイドの魅力と奥深さ
危険と隣り合わせの一方で、ガイド業は多くの喜びも与えてくれる。「いろんなお客さんと話すのが一番楽しいですね。優しい人、厳しい人、偉い人…人間の多様さに触れられるのが面白い」と語る。
知識の習得にも終わりはない。アマゾンには600種類の動物や鳥、3600種の魚、62種のピラニアが生息する。「ガイドとして即座に答えられるようになるには10年はかかる」と言い切る。「たとえばね、ピラルクーも、ブラジル国内は、パンタナール、マットグロッソ、アマゾン、それからペルー、ベネズエラ、コロンビア、エクアドルの近くまで行きます。だから名前が変わるんですね」。
ピラニア釣りをした日に、早速ホテルに頼んで夕飯に出してくれた。「残念ながら11月に生まれたばかりの小さなピラニアなんですよ(5月に訪問)。あと2、3年すると、これくらい(手を広げて)の大きさになって美味しくなります」とのことだが、カリッカリの唐揚げにしてくれたので、骨まで丸ごと食べられて美味しかった。小さいピラニアのおいしい調理法を知っていて、さっと提供してくれるのが、長いガイド歴で培った知識ともてなしの深い心を感じさせる。
環境保護への思い
大塚さんは、観光と環境保護の両立を強調する。アマゾン川では、その流域にしか生息しないピンクイルカ(アマゾンカワイルカ)と泳ぐツアーが人気だ。絶滅危惧種にも指定されているが、「毎日のように100人、200人とお客さんが来て、餌をやれば、もうイルカは餌を取らないし探さなくなってしまう。川に入るときは、虫除け、日焼けは落として、それに指輪、ネックレスは傷つけてしまうから外してもらいます」と力を込める。
そして未来への懸念を口にする。「ジャングルを守らなければ人間は生きていけない。地球上の36%の酸素を作り出すアマゾンがなくなれば、世界は砂漠になる」と語り、木を植え、酸素を作る取り組みの重要性を訴える。ビニールごみが数百年分解されずに残り、動物の命を奪う現実にも警鐘を鳴らした。
「今はまだアマゾンの空気はきれいです。でも、このままでは500mの高さまで濁ってしまう。だからこそ、人間がもっと真剣に考えなければならないのです」
日本語とアイデンティティ
仕事では日本語を使うが、普段の生活ではポルトガル語が中心だ。「日本語とポルトガル語を混ぜないことが大切。混ぜてしまうとどちらも中途半端になる」と語る。
日本語教育の重要性にも触れ、「日本語が廃れつつある今、もっと教育を盛んにしていければ」と願いを込める。
最後に「世界は狂っているかもしれない。でも僕らがジャングルを守り、木を植え、酸素を作る努力をすれば、必ずいい未来が来る」と締めくくった。
アマゾンで暮らし、自然と共に歩んできた大塚さんの言葉には、壮大な自然を前にしてなお人間にできることがある、という確信がにじんでいた。(終わり、取材=麻生公子)








