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日系ブラジル人初の外交官フジタ=壁を破った二世の生涯を日本語で

2025年11月15日

表紙
『エジムンド・ススム・フジタ―ブラジル外務省初の日系ブラジル人』

『エジムンド・ススム・フジタ―ブラジル外務省初の日系ブラジル人』は、ブラジル外交史と日系社会史の交錯点を描く貴重な伝記の日本語版PDF(https://jadesas.or.jp/jp/wp-content/uploads/2025/11/Edmundo-Sussumu-Fujita-book-PDF-File.pdf)だ。翻訳者はフェリペ・シャーベス・ゴンサルベス・ピント氏。

著者ウィリアンス・マルコ・デ・カスチリオ・ジュニオルは、サンパウロ大学での修士研究をもとに、日系二世エジムンド・ススム・フジタ(1950―2016)の生涯を丁寧に再構成した。

フジタ氏は1950年にサンパウロ市リベルダーデ区で最も有名な日系書店「太陽堂(Livraria Sol)」の経営者の息子として生まれた。フジタ氏は当時のフォーリャ紙の見出し「イタマラチー(ブラジル外務省)の壁を破った若い日系二世」にあるという言葉の通り、日本人移民の歴史にその名を刻んだ。

彼は1975年、ブラジル外務省に初の日系ブラジル人として入省し、のちに大使として活躍した人物だ。本書は、彼の家庭環境や教育、外交官としての挑戦を通じて、戦後ブラジル社会における日系人の地位向上と、アジア系ブラジル人が直面した偏見や壁を克服する過程を描く。

著者は家族・友人・同僚への綿密なインタビューや、未公開の個人資料を用いながら、フジタの人間性、努力、そして妻マリアの支えに光を当てている。彼の歩みは、単なる個人の成功譚ではなく、移民の子孫が国家の中枢に参画するまでの社会的変容を象徴している。

フェルナンド・デ・メロ・バヘット大使やモニカ・セツヨ・オカモト教授の序文も収録され、学術性と人間的温かさが融合した構成となっている。外交史・日系史・多文化共生研究に関心をもつ読者にとって、本書はブラジルにおける「壁を破った」一人の外交官の生涯を通じ、国際社会における多様性と包摂の意味を考えさせる力強い一冊となっている。



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