在日ブラジル人の定住化進展=永住者・帰化者の増加=日本社会との関係深化
在日ブラジル人社会に、静かな構造変化が進んでいる。2025年6月末時点で、日本に在留するブラジル国籍者(在日ブラジル人)は約21万500人と安定した規模を維持している。外国人全体では約395万7千人と過去最高を更新する中、ブラジル人コミュニティも長期的な定住が進んでいる。かつては製造業を中心とする短期就労、いわゆる「デカセギ労働」の象徴とみられてきたが、近年は永住者の増加や日本国籍への帰化が進み、定住を前提とした人口集団へと性格を変えつつある。
永住者数拡大──定住化の核心指標
在留資格のなかで「永住者」は、日本で最も安定的な在留基盤を示す指標だ。総体として2024年末時点で永住者は約91万8千人に達しており、前年より増加している。
国籍別では詳細な年次公開が限られるが、過去の統計ではブラジル国籍者の永住者数が約11万6818人に上るとされる。これは在日ブラジル人人口約21万1千人の過半数が安定した永住資格を取得していることを示す重要な数字だ。
永住資格以外に、「定住者」や「日本人の配偶者等」といった長期在留資格保有者も多く、ブラジル人コミュニティは「労働者としての一時的滞在」から家族や地域社会と結びついた定住へ大きくシフトしている。
例えば在留資格別のある統計では、ブラジル人の在留資格構成として「永住者11万2934人」「定住者6万5021人」「日本人の配偶者等1万7668人」などが確認されている。これらは安定的な生活基盤を背景とした長期滞在と理解できる。
帰化の推移──日本社会への制度的統合
在日ブラジル人コミュニティの定住化を語る上で、「帰化(日本国籍取得)」の動向も見逃せない。法務省の帰化許可統計によると、直近3年間のブラジル人帰化者数は次の通りだ。
2022年:340人
2023年:526人
2024年:498人
この3年間だけでも合計約1364人が日本国籍を取得している。これに加え、2010年代以降の傾向を年間400~600人前後で累積すると、過去15年で約5千〜7千人程度が日本国籍を取得した可能性が高いと推計できる。帰化すれば、ブラジル国籍者数から外れるので実際の「定住化」はさらに進んでいる。
これは公式統計が国籍別累計を詳細に示していないことを踏まえた保守的な推計値だが、在日ブラジル人コミュニティが日本社会への制度的統合を進めている事実を浮かび上がらせる指標だ。
帰化は単純な人数以上の意味を持つ。日本社会に深く根ざし、教育・雇用・家族生活を日本制度のもとで営む意思と選択を反映する重要な社会統合の形だ。
人口構造と地域分布──多様性と成熟
在日ブラジル人の多くは日系人で、愛知、静岡、岐阜、三重などの製造業集積地に集中してきた。工場現場での労働力としての役割は依然大きいが、二世・三世世代が学齢期に達し、日本社会の一員としての生活を選択する家庭が増えている点も特徴だ。
永住者や配偶者等の在留資格保有者は、子どもの教育や住宅購入、地域コミュニティ活動への参加といった社会的行動を通じ、地域社会との接点を強化している。これは単なる人口統計以上の社会的意味を持つ。
政策視点──定住化支援と共生戦略の課題
在日ブラジル人の定住化は、日本の人口減少・労働力不足という構造的課題と結び付き、単なる外国人労働力供給の域を超えている。永住者と帰化者の増加は、日本社会の一構成員としての位置づけが進むことを示す一方、教育支援、言語・文化支援、地域共生施策の充実といった中長期的な制度設計が求められる。
特に、帰化後もブラジル語・日本語の二文化を生かす人材が増えつつあることは、企業や自治体が進める国際戦略にとっても価値ある資源となる可能性を秘める。
在日ブラジル人の動向は、数字の背後にある「定住化」と「社会統合」のプロセスを読み解く鍵であり、日本の人口政策・地域活性化戦略の重要な観察点だ。








