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アルゼンチン=財政再建、信任回復に道=ミレイ改革の持続性に試練

2026年1月31日

万華鏡1
アルゼンチンのミレイ大統領(左)とルイス・カプート経済相(右)(Foto: Instagram@javiermilei)

 急進的な歳出削減で国家財政に切り込んできたアルゼンチンのミレイ政権が、債務圧縮とインフレ沈静化を背景に国際金融市場の信任を回復しつつある。政権発足から2年、国際機関の巨額支援や信用指標の改善が進む一方、年金や公共部門の圧縮に伴う社会的負担、為替不安、2027年大統領選をにらんだ政治的揺らぎが改革の持続性に影を落としていると30日付CNNブラジル(1)が伝えた。

 ミレイ政権の改革は国際金融機関から一定の支持を得ている。世界銀行は25年4月に120億ドル、同年9月に40億ドルを追加支援し、経済近代化や外資誘致、雇用創出の取り組みに「強い信頼」を示した。世界銀行元副総裁で国際通貨基金(IMF)元理事のオタヴィアーノ・カヌート氏も、インフレが慢性的な財政赤字に起因していたとの認識を示し、ミレイ政権の財政規律路線を妥当と評価する。

 こうした動きを受け、アルゼンチンの信用力とカントリーリスクは改善基調が続く。ブルームバーグ経済分析部門のエコノミスト、ヒメナ・スニガ氏は「同国が年内にも国際資本市場へ復帰する可能性がある」と話す。

 政府統計によれば、政府債務残高は23年のGDP比155・7%から24年末に82・6%へ低下し、25年第2四半期には76・4%と最小値となった。背景には、24年に14年ぶりの財政黒字が実現したことがあり、翌2025年も黒字を維持してIMF目標を上回った。

 サンマルティン国立大学(UNSAM)マクロ経済研究センターのグイド・ザック氏は、均衡に近い財政への転換を評価する一方、特定の金融商品に含まれる金利処理によって黒字が実質的には赤字となる可能性を指摘。ただし、現時点では国内市場で十分に吸収可能な規模にとどまるという。

 IMFは25年7月の審査で一次収支黒字目標を約10兆4千億ペソに設定したが、政府はこれを1兆3千億ペソ上回った。ルイス・カプート経済相は、25年の基礎的支出が23年比で実質27%減となる一方、子ども手当や食料カードなど脆弱層向け支援は23年末から25年末にかけて実質43%増えたと説明した。

 ただ、ザック氏はインフラ投資などの先送りの持続性を疑問視し、今回の調整は「極めて逆進的」と述べる。年金や州政府向け移転、科学技術、医療・教育関連の大幅削減が続く一方で、資産関連の減税が進んでいるためだ。カヌート氏も、公的債務の55%超が外貨建てである点を踏まえ、為替変動や外部ショックへの脆弱性を警告している。

 インフレ率はミレイ政権の成果として注目される。23年12月に前月比25・5%、24年4月に年率289・4%のピークをつけたアルゼンチンの物価上昇は、25年に入り急速に鈍化。5月には月次1・5%、10月には年率31・3%を記録し、年末には月次2・8%、年間31・5%となった。カヌート氏は、財政赤字の貨幣発行抑制や金融引き締めがディスインフレに寄与したと分析する。

 もっとも国内経済には課題が残る。スニガ氏は、24年の景気後退後に一旦持ち直したものの、足元では停滞感が強いとし、「安定のために停滞を受け入れ続けるかが鍵だ」と述べた。ミレイ氏が選挙戦で「チェーンソーは政治特権階級に向けられる」と主張していた一方、実際には年金支給額や公務員給与が凍結され、国民に負担が及んでいる点にも触れた。

 政治リスクも残る。25年9月のブエノスアイレス州の州議会選でミレイ政党が大敗し、27年大統領選の不確実性が高まった。スニガ氏は、強硬派ペロン主義勢力が政権を奪還した場合、国債スプレッドが再び急拡大する可能性を指摘し、カヌート氏も改革が「技術的には整合的でも、中期的には政治的に脆弱になり得る」と述べている。

 さらに、為替問題も焦点だ。アルゼンチンは長年の為替規制を段階的に緩和し、一部制度下で自由化を進めているが、ペソ需要は不安定なままだ。スニガ氏は、危機を繰り返してきた過去の経験「通貨需要の不安定性」を生み、小さな政治・経済要因でもドル高が加速し得ると解説する。

 アルゼンチンは25年に経常収支赤字を計上し、純外貨準備も依然として大幅なマイナス圏にある。直近では増加傾向にあるものの、中央銀行が選挙戦略上、前年に外貨準備の積み増しを行わなかったとの見方が出ている。

 ザック氏は、最近の家計調査で所得把握が改善し、インフレの振れが統計比較に影響している点に触れたうえで、「基本的には、アルゼンチンが成長を続ける限り、貧困は減らすことができる」と述べた。


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