笹川平和財団=ブラジル若手日系政治家招へい=視察で見えた「共創」の現場=【第2回】=教育、防災、多文化共生の具体像
公益財団法人笹川平和財団が主催する「ブラジル若手日系政治家招へい」プログラムで訪日した5人の若手政治家とオピニオンリーダーにとり、この5日間は、机上の議論を現場の視察で裏打ちする行程となった。
2月6日付笹川平和財団サイト(https://www.spf.org/asia-islam/news/20260206.html) によれば、一行は初日、角南篤笹川平和財団理事長を表敬訪問し、同財団とブラジル日系社会との連携深化に向けた活動や、日伯間の今後の交流について意見を交わした。
その後、一行は教育関連企業の株式会社ベネッセコーポレーションを訪れ、オンライン学習やデジタル教材の活用について説明を受けた。広大な国土を抱えるブラジルでは地域間の教育格差が深刻だ。参加者の一人は「デジタル技術は、地理的制約を越える鍵になり得る」と語った。最高裁も訪問し、三審制運用など司法制度の説明を受け、「制度への信頼が民主主義を支えている」との印象を共有した。
2日目は東京都内の私立高校を訪れ、日本の学校制度や教育行政制度にかかる講義を受け、数学および体育の授業を視察。剣道も体験した。議員の一人は「礼に始まり礼に終わる精神は、社会の規律や相互尊重を象徴している」と述べ、日本文化の根底にある価値観への理解を深めた。また同財団主催で、外務省プログラムで招へいされた5人のブラジル上院議員と、外務省より元駐ブラジル日本国大使他関係者、日本の中南米研究者との合同レセプションが行われた。
その後、堀井巌外務副大臣を表敬訪問し、日伯両国の友好関係と絆について意見交換をし、「国際舞台で存在感を高めるブラジルと日本が連携を強めることは、地域と世界の安定に資する」との認識で一致した。
3日目は群馬県へ移動し、知事と面会。姉妹都市提携を基盤に、産業や人的交流の拡充を議論した。八ツ場ダムなどの治水施設を視察したペドロ・アイハラ氏は、「日本の経験から学ぶことは非常に大きい。防災はブラジルの国家的課題だ」と語り、技術協力への期待を示した。
4日目に訪れた群馬県大泉町では、町長を表敬訪問し、多文化共生の取り組みを学んだ。ブラジル人学校や農園を視察し、在日社会の現実に向き合った。ある議員は「デカセギという言葉だけでは語れない多様な人生がここにある」と述べ、「日本社会の一員として貢献している姿を母国でも伝えたい」と語った。言語教育や社会保障をめぐる課題も共有され、「制度的支援の強化が両国の利益につながる」との認識で一致した。
最終日には国際協力機構(JICA)本部に小林広幸理事(中南米担当)を表敬訪問。長年の日系社会支援の歩みを踏まえ、「支援から共創へ」という方向性が示された。参加議員は「私たちは受け手ではなく、共に未来を設計する当事者だ」と語り、対等な関係構築への意欲をにじませた。午後に第1回で紹介した相互理解促進セミナーが開催された。
今回の試みは笹川平和財団による、政府間交渉を補完する「1・5トラック外交」と位置づけられる。若手政治家との信頼醸成は、将来の政策形成や経済連携に影響を及ぼす可能性を秘める。
130年の歴史は、移民の努力と相互理解の積み重ねによって築かれてきた。視察で交わされた「共に創る」という言葉は、抽象的な理念ではない。教育、防災、多文化共生という具体的な現場で、その輪郭を帯び始めている。日伯関係は今、次の世代の手に委ねられている。(終わり)








