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複雑な税制・労働慣習に活用を=NTTデータがAIセミナー=日系企業の現場で進むDX最前線

2026年3月17日

セミナーの様子、企業概要を説明する藤田さん
セミナーの様子、企業概要を説明する藤田さん

 ブラジルの地で戦う日系企業に「AI(人工知能)」の実装という新たな潮流が押し寄せている。NTTデータグループ(以下、NTTデータ)は10日、サンパウロ市南部の拠点で日系企業15社の駐在員などを対象としたAI活用セミナーを開催した。複雑な税制や労働慣習を抱えるブラジルにおいて、いかにAIを「武器」としてDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるか。現場の苦悩と、それに応える最前線の知恵を追った。

 セミナーの冒頭、日本から招いたNTTデータの専門家が強調したのは、AI導入に対する「完璧主義」の罠だ。「多額の予算を投じ、計画を完璧に練り上げようとするほど失敗する」という逆説的な指摘が会場を突いた。

 同社が提示したのは、AI活用を「自社内か対外か」「日々の業務改善かゲームチェンジ(劇的変化)か」という二つの軸で整理する手法だ。注目を集めやすいのは「AIが顧客に驚きの提案をする」といった華やかな案件だが、実際に成果を上げ、導入のリスクを抑えられるのは、社内の地味な業務改善だという。

 「見た目はキャッチーではないかもしれないが、社内の日々の業務を改善する『ボリュームゾーン』こそが、最初の導入として最も適している」。小さなトライアンドエラーを繰り返し、現場のスタッフに「AIは使える」という成功体験を積ませることで、文化としてのAI活用を醸成する重要性が説かれた。

 ブラジル拠点におけるAI導入は、本社主導の大規模な戦略とは異なる役割が求められる。現地でしか見えない「手の届かないコミュニケーション」や、頻繁に変わる関税・税制、特有の労働習慣への対応だ。

 セミナーでは具体的な活用例として、ポルトガル語の契約書レビューの効率化や、ブラジル独特の税制に対応した請求書処理の自動化が挙げられた。また、製造現場における「熟練工の暗黙知」をAIによるヒアリングで抽出する取り組みも紹介された。これは、人の入れ替わりが激しい海外拠点の課題である「属人化の解消」に直結する。

 質疑応答では、現地を預かる駐在員たちの切実な声が漏れた。ある南米地域責任者は、「業務効率化は進んでいるが、ヘッドカウント(人員数)や残業時間の削減といった会計上の数字に直結しにくい。経営層にどう説明すべきか」と、投資対効果(ROI)の可視化という難題を投げかけた。これに対しNTTデータ側は「一人当たりの提案数やレスポンス時間の短縮など、経営指標をブレークダウンしたKPI(重要業績評価指標)を設定し、数字に表れない『新しくできるようになったこと』を粘り強く伝える必要がある」と応じた。

 ある参加者は「周囲が現地スタッフばかりの中で、日本人が一人座る会議。言葉の壁によるストレスをどう解消すべきか」と、グローバル拠点ならではの孤独感を吐露した。これには、リアルタイム翻訳や会議要約を行う「コパイロット」などの最新ツールによる解決策が提示され、言語の壁がAIによって「破壊」されつつある現状が共有された。

 NTTデータラテンアメリカ営業責任者の藤田潤氏は、同社として「AIがセンターに来るビジネスを。そこにグループの強みであるITをうまく繋げた展開を」との方針を打ち出していることを説明し、「ブラジル拠点は、スペインやポルトガルを含むラテンアメリカ地域の重要拠点として、自動車・金融・製造など幅広い業界をサポートしていくつもり」と述べた。

 参加者の一人、ブラジル味の素社のITテクニカル・ダイレクター、荻野誠哉さんは「考え方、進め方は概ね自社で実施しようとしている内容と相違なく参考となった。今後、具体的な進め方を検討する際には相談することも検討したい」との感想を述べた。

 セミナーの締めくくりには、来る5月27日に開催される大規模な展示会についても触れられた。AIはもはや今日、明日の業務を支える実務的なツールへと変貌を遂げてきたようだ。



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