沖縄移民の中南米越境史を探る=名桜大学『ウチナーンチュの移民』
名桜大学大学院国際文化研究科などが主催したシンポジウム「ウチナーンチュの移民―境界と移動」の内容をまとめた同名書籍が、名桜大学やんばるブックレットとして25年3月に刊行された。世界に広がる沖縄系移民の歴史と現在を、複数の研究者の視点から掘り下げた学術的成果だ。
沖縄は、日本国内でも有数の移民県だ。本書は、その移民史を単なる「出郷の物語」としてではなく、国境を越えて重なり合う移動の歴史として捉え直す。シンポジウムでは、坪井祐司名桜大学教授が全体進行を務め、砂川昌範沖縄ディアスポラ研究センター長が同センター設立の意義と、世界のウチナーンチュをめぐる研究の広がりを語った。
基調講演では、比嘉久名護博物館特任館長が、メキシコなどに移住した日本人炭鉱労働者の暮らしを描いた上野英信著の記録文学『眉屋私記』を手がかりに、名護市屋部から移民が旅立った歴史的背景を紹介。上原なつき同センター研究員が基調講演の解説として、キューバに渡った沖縄移民とその子孫が営む宗教実践や慰霊行事を調査報告として示した。さらに同大学准教授の長尾直洋氏は、具志川地域からブラジルへ渡った移民の証言をもとに、ハワイや中南米を横断する移動経験の広がりを分析。名桜大学客員教授の我那覇宗孝氏は、ペルーに渡った沖縄移民がアルゼンチンやブラジルへ再移動していく歴史を明らかにした。
ここから浮かび上がるのは、一つの国に定住するだけでは語りきれない、越境的で重層的な移民の姿だ。沖縄と世界を結ぶ人びとの移動の歴史を、学術的視点から丁寧に掘り起こした本書は、沖縄ディアスポラ研究の現在地を示すとともに、グローバル化する社会における人の移動の意味を静かに問いかけている。








