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ブラジル=森林再生モニタリングに新手法=日系企業と国際NGOが連携=衛星×AIで森林再生を可視化

2026年4月14日

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 世界最大規模の森林再生目標を掲げるブラジルで、日本企業と国際NGOの協働が新たな可能性を切り開きつつある。日本発スタートアップで4月1日からデロイト トーマツ グループに参画したデロイト トーマツ サステナクラフト株式会社(DTSC)と、国際NGOコンサベーション・インターナショナル(CI)ブラジルは、JICAとIDB Labの支援プログラム「TSUBASA」を契機に連携し、2024年から衛星データと機械学習を活用した森林再生モニタリング手法の開発を進めている。

 TSUBASAは日本企業の技術と中南米の開発課題を結びつける枠組みであり、ブラジルでの事業展開を模索するスタートアップにとって重要な足掛かりとなる。IDB Labは出融資や技術協力を通じて実証と事業拡大を支援しており、日本は同機関の最大出資国でもある。さらにJICAはIDBグループと10億ドル規模の信託基金を通じた連携強化に合意しており、民間資金の呼び込みや技術革新の加速に向けた制度的基盤も整いつつある。

 ブラジルは国家計画「Planaveg」のもと、2030年までに1200万ヘクタールの在来植生回復を掲げるが、現状は約340万ヘクタールにとどまる。取り組みの加速が求められる一方で、従来の評価は主に面積ベースに依存しており、同じ面積でも森林の回復度や質には大きなばらつきがある。炭素蓄積量や生態系の回復状況を定量的に把握する手段の不足が、政策や投資判断の制約となってきた。

 DTSCは衛星データと機械学習を組み合わせ、広域のバイオマス炭素蓄積量を推定するモデル構築を強みとする。一方、CIブラジルは国内各地の森林再生ネットワークと豊富なフィールドデータ、専門家の知見を有する。広大な国土を持つブラジルでは現地調査のみで全体像を把握することは現実的でなく、衛星技術の活用が不可欠となる。両者の連携により、衛星による広域分析と現地データによる検証を組み合わせ、モデルの精度と実用性を高めている。

 今回の分析では、森林再生活動の進展に伴い、ヘクタール当たりの炭素蓄積量が継続的に増加していることが確認された。また、フィールドデータの蓄積が推定精度の向上に直結することも明らかとなり、現地調査とデジタル技術の相互補完の重要性が裏付けられた。

 この手法により、従来の限られたサンプル区画に依存したモニタリングから、対象エリア全体をカバーする継続的な把握へと進化する。アクセスが困難な遠隔地でも森林の状態を把握できるため、森林再生プロジェクトやカーボンクレジット事業の信頼性向上にも寄与することが期待される。

 今後は生物多様性分野への応用やさらなるモデル精緻化が課題となる。DTSCの濱口勝匡氏は「ブラジルで成果が確認できれば東南アジアなど他地域への展開も視野に入る。衛星データはオープンであり、スケール可能性が高い」と述べ、技術の国際展開に意欲を示す。どの再生手法がより高い成果を生むのかといった分析にもつなげたい考えだ。

 CIブラジルのアケル・サリバ氏も「現地調査は高コストで大規模展開に限界がある。この手法が確立されればモニタリングの在り方を変え、カーボン市場にも影響を与え得る」と評価する一方、「精度の高いモデルには現地データとの往復が不可欠」と強調する。日本企業との連携についても、技術力と現場実装力の補完関係に期待を寄せる。

 技術を持つ企業、資金とネットワークを担う国際機関、現場知見を持つNGOが連携する本モデルは、ブラジルの環境課題に対応する新たな枠組みとして注目される。気候変動対策や生物多様性保全への関心が高まる中、衛星データやAI、リモートセンシングの活用は急速に存在感を増している。日本企業にとっても、ブラジルの環境分野は技術を軸とした新たな事業機会を生み出す有望な市場となりつつある。(武田エリアス真由子記者)



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