site.title

小説=流氓=薄倖移民の痛恨歌=矢嶋健介 著=45

2023年8月30日

 律子たちが、岡野に勇気づけられて、夜逃げを決行したこと、また磯田の励ましも決して我田引水ではなかった。彼らの誘導があったからこそ、こうして自分たちは生き延びられたのだ。
 マラリアに罹った父は、ここしばらく高熱の反復もなく、徐々に食慾も増しているから、一、二ヵ月したら仕事に出られそうだ。
 乾季は農閑期でもあった。この時期の日曜日は、畑仕事を休んだ。酒好きの者は飲み仲間を訪問し、飲みながら日頃の鬱憤をぶちまけたり、将来の抱負を語りあった。そこへまた別の隣人が現われる。雑談は夜まで続くのだ。接待の主婦たちは大変である。在り合わせの卵焼きなどを作ってふるまった。自...

会員限定

有料会員限定コンテンツ

この記事の続きは有料会員限定コンテンツです。閲覧するには記事閲覧権限の取得が必要です。

認証情報を確認中...

有料記事閲覧について:
PDF会員は月に1記事まで、WEB/PDF会員はすべての有料記事を閲覧できます。

PDF会員の方へ:
すでにログインしている場合は、「今すぐ記事を読む」ボタンをクリックすると記事を閲覧できます。サーバー側で認証状態を確認できない場合でも、このボタンから直接アクセスできます。

Loading...