ふるさと巡り=北東伯の日系社会を訪ねて(5)=乾燥地帯を生かして花栽培

ふるさと巡り2日目、一行は砂漠のバラ(Rosa do Deserto)生産農園へと足を運んだ。「はて、砂漠のバラとはなんだろうか?」と頭に疑問符を浮かべたままバスに揺られていると、エリアスフジヤマ農園に着いた。
バスを降りると目の前には、2ヘクタールの広大な土地に40万株ものバラが咲いていた。しかしこのバラ、一般的なバラのイメージとは違い、花は素朴で小柄。その根は大根のように太い。例えるならブルドッグのような可愛さを持っている。
この砂漠のバラは日本では「アデニウム」という名称で親しまれている。原産地は、アフリカからアラビア半島までの乾燥地帯。葉はとても分厚い。分厚い葉と大きい根っこに水が蓄えられているからこのような形状になっているという。水はあまり必要なく、土が乾燥したときにだけあげる。その代わり、しっかりと太陽の光を当てることが必要だ。栽培環境を整えるのが難しく、市場では珍しい品種とされている。ペトロリーナ市は雨の少ない乾燥地であり、砂漠のバラを育てるのに適している。
一目ぼれした参加者も多数出て、「とても綺麗だし、聖州ではなかなか手に入らないのでつい買っちゃった」と顔をほころばせていた。
エリアスフジヤマ農園創設者のエリアス・フジヤマさん(2世・60歳)は、パラ州サントアントニオ・ド・タウア市で胡椒やパパイアを生産するフジヤマ家に生まれ育った。
エリアスさんは1992年、ペトロリーナ市で農業成功者が出ていると聞き、自身も友人と共に移住し、果物栽培をはじめた。
2018年、パラ州の親戚から砂漠のバラを見せてもらった際、「自分たちでも育てられるんじゃないか」と思い、バイア州モロ・ド・シャペウに出向いて、砂漠のバラ畑を視察し、育て方を学んだ。種を購入し、始めは趣味の一環として栽培を始めた。沢山のバラがうまく育ち、需要も多くあることから、2020年に販売を開始した。
エリアスさんは栽培当初を振り返り「趣味として始めたんですけど、最初から大きな土地で育ててしまい、本業のあとの週末しか面倒をみることができなくて大変でした」と語った。現在は12人の従業員が砂漠のバラ栽培のために働いている。
エリアスさんから砂漠のバラ農園を引き継いだ息子のフィリッペさん(3世・30歳)は「私は父がこのバラの栽培を始めた時から一緒にやってきたので栽培の仕方は熟知しています。今後、大規模な小売店に卸して、より花産業で欠かせない存在になっていきたいです」と展望を語った。(続く、島田莉奈記者)