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ふるさと巡り=北東伯の日系社会を訪ねて(11・終)=私のふるさとはどこ?

2024年4月20日

 トロピカルな陽光を浴びながらのサンフランシスコ河遊覧で始まった第55回県連ふるさと巡りは、サンフランシスコ河に沈んでいく夕日と共に終わろうとしていた。旅の締めくくりは、再びのサンフランシスコ河遊覧。夕日を眺めながらの晩餐を楽しんでいると、「今回も楽しかったわね」「また生きてたら会いましょうね」なんて会話が聞こえてきた。
 楽し気に旅を振り返っていたのは、今回のツアー参加者の中で最年長94歳のヨシコ・フジカワさん(沖縄県)だった。ヨシコさんはたまたま同席した女性参加者と意気投合し、初対面とは思えないほど打ち解けた雰囲気で会話を楽しんでいた。
 ヨシコさんは新たな出会いができるふるさと巡りを毎年楽しみにしているという。「元気な秘訣はおっちょこちょいでいること。神経質でいると病気になるから少しバカなくらいが丁度いい」と笑う。旅を通じてすぐに仲良くなれることもふるさと巡りの醍醐味の一つかもしれない。
 記者は4日間、人生の先輩と共に過ごし、ふるさととはなんだろうと考えた。
 人は自分にとってより良い人生を求め、生まれ育った場所を去って、新たな居場所を築く。生まれた土地から離れて暮らすことで「ふるさと」は生まれるのだろう。
 ある2世の参加者は「自分のふるさとはブラジルだけど、親戚のいる日本に行ったら、『帰ってきた』と言われた。最初はびっくりしたけど先祖のルーツが第2の『ふるさと』となった瞬間だった」と話していた。
 「ふるさと」はその人のアイデンティティーを形成する重要な要素だ。

夕陽に染まるサンフランシスコ河
夕陽に染まるサンフランシスコ河

 今回、いくつかの農園を回った。一度はこの土地を去った息子、娘が家族の仕事を引き継ぐために、ふるさとに戻って一緒に働いている姿を観た。最近では稀なパターンだろう。
 ふるさとは一つでも十分。だけど、いくつあってもいいとも思う。私は今後、どこへ向かい、開拓して自分の居場所を築いていくのだろうか。まだまだ人生の先輩の話を聞いて巡りたいと思う。(終わり、島田莉奈記者)


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