ふるさと巡り=北東伯の日系社会を訪ねて(9)=開拓の誇り、絶品ぶどうに

北東伯に着いて3日目。ふるさと巡り一行はペルナンブッコ州ペトロリーナの佐々木ぶどう農園を訪れた。初日、2日目に訪れた施設でも同地名産のぶどうが振舞われ、美味しく頂いたが、佐々木ぶどう農園のアメリカ品種「コットンキャンディ」の美味しさには驚いた。砂糖が入っていると思うほど甘く、食べる手が止まらない。食べ飽きるどころか虜になった。今でもあの味は忘れられない。
佐々木ぶどう農園の佐々木パウロさん(3世、67歳)は、26歳の時にコチア青年の開拓事業「クラサプロジェクト」に参加し、サンパウロ州リンス市から同地に移った。現在は各100へクタールの畑3つで、ぶどう栽培を行っている。
佐々木さんは移住当時のことを振り返り「電気などが通ってなくて、暮らしの面では苦労が絶えませんでしたが、農業自自体は輸出へのポテンシャルを確信していたので、諦めることなく今日までやってこれました」と落ち着いた様子で語った。
「昔、この地域には何もありませんでした。しかし、父をはじめ日系人が移住したことで、農業が成功し、この地を変えました。私はこのことを誇りに思っています」
佐々木さんの農園には現在、次女のパウラさん(4世・36歳)が積極的に関わり、経営を支えている。パウラさんはサンパウロ市の大学でマーケティングを学んだ後、米国サンフランシスコで更に勉学を積んだ。一般企業での就労経験もある。

パウラさんは「外国経験やマーケティングの知識を生かしつつ、家業を手伝っています。40年以上続けている父には敵いませんが、いつの日か、父が辞めざる得ない日がきたときの為にも、日々頑張って農業を学んでいます」と意気込みを語った。
「コットンキャンディ」の美味しさと、佐々木一家の想いに感銘を受けたふるさと巡り一行からは「どのくらいの人数で栽培しているの?」「この植物はどうなっているの?」など、矢継ぎ早に質問が飛んだ。
「最後にもう一粒だけ」と、絶品ぶどうに後ろ髪をひかれながら、一行は、クラサ会館で行われる現地日本人会との交流会へ向かった。(続く、島田莉奈記者)