【佳子様・日伯130周年・移民117周年】先人敬慕の気持ちを新たに=在サンパウロ日本国総領事 清水享

令和七年の移民の日を迎えるにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
一九〇八年の笠戸丸のサントス入港から一一七年目を迎える本年は、ちょうど日本とブラジルが外交関係を樹立してから一三〇周年の節目にあたります。今月前半、畏くも秋篠宮佳子内親王殿下をサンパウロにお迎えし、皆様と共にこの慶節をお祝いできるのは何よりもありがたいことであります。
さて、昨年の移民の日にあたりこの場に寄稿させて頂いて以降も、日本とブラジルの間では活発な交流が見られました。日本からは、北海道、青森県、岩手県、長野県、福井県、和歌山県、宮崎県から知事や副知事をはじめとする方々がサンパウロを訪問され、各県人会の皆様等との心温まる歓迎行事に参加されました。また、浜松市長や大阪市副市長もご来聖され、当地所在の関係機関との意見交換などを通じて友好協力関係を深められました。昨年一一月には、リオにおけるG20出席のため石破総理が来伯され、五月の岸田総理来訪と合わせて同一年に日本の総理が二度ブラジル訪問をされるという画期的な年となりました。
そして本年三月のルーラ大統領国賓訪日は、まだ皆様の記憶に新しいでしょう。四月に始まった大阪・関西万博には、早くもヌネス・サンパウロ市長が訪問され、また何人もの州知事が参加予定であるなど、今年も大いに活発な相互交流が見込まれています。
このような前向きな流れを受けて、当地や全伯の日系社会として今後の挑戦や課題についても議論して行くことが重要です。世代を経るにつけ、日本語や日本文化の継承が徐々に難しくなってきているとの指摘がなされて久しいですが、ではどのように継承していくのか。先人の「こころ」を如何にして後代に伝えていくのか。
過去一年半あまり、私はサンパウロ州内の多数の日系移住地やマット・グロッソ・ド・スール州のカンポグランデ、更にはミナス・ジェライス州の三角ミナス地域などを訪問いたしました。また、政治、経済、法曹、マスメディア、芸術・文化等々、およそあらゆる分野でご活躍の日系諸氏にお目にかかり、近しく意見交換をさせて頂きました。何れにおいても共通して感じることは、「パイオニア精神」と「創意工夫」であります。そして、努力を結実させるための「Valores」-すなわちブラジル日本文化福祉協会が「携帯カード」にまとめて下さった「責任、学び、誠実、敬意、忍耐、親切、感謝、協同(協働)」であります。
二〇二八年の「移住一二〇周年」までちょうど三年となった今、とりわけ大きな観点から今後を見据えた議論を深めていくことが肝心と思われます。そのために、私たち総領事館としても、皆様とともに考え取り組んでいきたいと考えています。
最後になりましたが、ブラジル日本都道府県人会連合会が、折しも本年、イビラプエラ公園内の開拓先没者慰霊碑の修繕のために協力を呼びかけておられることに敬意を表します。先人敬慕の気持ちを新たにして、移住一二〇周年に向けて皆様と一緒に努めていきたいと思います。
令和七年 六月一八日