50%関税=工業、農業など悪影響大か=課税長期化なら市場失う?

トランプ米大統領が8月1日以降、ブラジルからの輸入商品全てに50%の関税をかけると通達したことを受け、工業界や農業界を中心に深刻な影響が出ることが懸念されていると9日付アジェンシア・ブラジルなど(1)(2)(3)が報じている。
ブラジリア大学国際関係研究所教授で米国国立貿易研究所研究員のロベルト・ゴウラルチ・メネゼス氏は、ブラジルから米国への輸出は全体の15%程だが、米国向けの商品は工業製品や半製品が多く、この状況が続けば失業者が増え、ドル流入も減るという深刻な事態が生じると指摘する、鉱工業製品で米国への輸出が多いのは、原油、鉄鉱石、鉄鋼、機械、航空機、電子機器で、エンブラエルとペトロブラスへの影響が特に大きいと見られている。
サンパウロ州Ibmec大学国際関係・経済学教授のアレッシャンドレ・ピレス氏は、エンブラエルは一部のジェット機で米国に十分な市場を持っており、ペトロブラスは米国に石油を輸出している。両者は商品を他国に売り捌くこともできるが、そうすると、最重要市場である北米市場の価格が上昇すると指摘している。
農業界でも米国は重要市場で、砂糖やコーヒー、オレンジジュース、食肉が主な輸出品目だ。検疫上の理由による自主的な禁輸措置がとられた時などは短期的に輸出が停止または減少し、農産物の国内価格が下落する可能性があるが、新関税率による生産者への経済的な打撃はインフレ緩和効果を上回る可能性が強い。
また、制裁が長期にわたり、事実上の封鎖措置が長期化すると、失った市場を取り戻すことが難しくなる。ピレス氏は関税撤廃を求める早期交渉の影響を受けるエリート層からの圧力が起きると見ているが、全国工業連合(CNI)は9日、米国の措置を正当化する経済的根拠はないとし、ブラジルにとって最大の貿易相手国の一つである米国との関係維持のための交渉強化を求める声明を出した。トランプ氏はブラジルは不公平な貿易関係を維持していると非難しているが、両国の貿易額は年約800億米ドルに及び、米国はブラジルに対して2億米ドルの黒字を維持している。
今回の関税引き上げはブラジルの経済が肯定的な動きを見せている時に発表され、9~10日の証券市場は株価指数の急落やドル化上昇といった反応を見せた。(4)(5)
産業界からの反応はCNIだけではなく、農業牧畜議員前線(FPA)もブラジル政府に「断固とした戦略的な対応」を求めている。(6)
10日付ヴァロール・サイト(7)によると、農産物の中でも影響が特に懸念されているのは、米国を世界最大の輸出相手国とするオレンジジュースやコーヒー、輸出額が第2位の牛肉や砂糖だ。
国際貿易に携わる政府関係者は非公式に、関税引き上げ後の米国への農産物輸出は不可能になると見ているという。また、ある関係者は、可能な限り外交交渉をと勧めているが、ブラジルは米国に屈服するつもりはなく、アグリビジネスは他の市場を求めて適応していくだろうと強調しているという。
全国柑橘ジュース輸出業者協会は、米国が10%の追加関税を発表した4月、米国への年間輸出量23万5500トンと当時の為替レートから、年5億8500万レの追加コストを予測。輸出損失は年間11億レとの見積もりを行った。
イビアパバ・ネット事務局長はそれを上回る税率発表に驚き、影響の分析は続けるが、この措置はブラジルだけでなく、数千人の雇用を生み出し、数十年にわたってブラジルを重要な供給国としてきた米国のジュース業界にも大きな影響を与えるとの認識を示した。
コーヒー輸出業者評議会のマルコス・マトス事務局長も、50%関税は米国の消費者だけでなく、サプライチェーンにも負担をかけると発言。ブラジルは米国への主要なコーヒー供給国で、米国の輸入量の約30%がブラジル産だ。市場筋はサプライチェーンの税負担は60%を超えると見ている。米国コーヒー業界は220万人の雇用を抱え、国内総生産(GDP)の1・2%を占めている上、76%の国民がコーヒーを愛飲し、輸入コーヒー1ドルにつき43ドルの利益が生まれるとされる米国の経済や消費者への影響が関税引き上げへの足かせになるかはまだ分かっていない。
コーヒー輸出業者評議会のマルコス・マトス事務局長も、50%関税は米国の消費者だけでなく、サプライチェーンにも負担をかけると発言。ブラジルは米国への主要なコーヒー供給国で、米国の輸入量の約30%がブラジル産だ。市場筋はサプライチェーンの税負担は60%を超えると見ている。米国コーヒー業界は220万人の雇用を抱え、国内総生産(GDP)の1・2%を占めている上、76%の国民がコーヒーを愛飲し、輸入コーヒー1ドルにつき43ドルの利益が生まれるとされる米国の経済や消費者への影響が関税引き上げへの足かせになるかはまだ分かっていない。
牛肉の輸入量は世界第2位で、上半期もブラジル産牛肉18・14万トンを10・4億米ドルで購入したが、新関税でブラジル産牛肉に課せられる関税は80%を超えることになる。ブラジル食肉輸出産業協会は、国家間の協力と安定が求められる状況下、地政学的な問題が世界的な供給の障壁になることを避け、食料の安全保障を確保することが重要だと強調した。
砂糖セクターも、50%関税で北東部の製糖工場からの砂糖出荷は不可能となり、サプライチェーンで失業が起きる可能性を指摘。各企業は収穫毎に15万トンの割当量を有し、最大6億レの収益を生むが、新関税が米国が設定した割当量に影響を与えるかはまだ不透明だ。