タルシジオ=サンパウロ州経済優先に乗換え=前大統領恩赦に距離置く=50%関税で方針転換

26年大統領選候補の一人として周囲から受けたプレッシャーのため、タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事が、米国トランプ大統領が発表したブラジルからの輸入品への50%関税措置の解決に専念しており、トランプ氏やボルソナロ前大統領が求めているボルソナロ氏のクーデター計画疑惑への恩赦には触れない意向だという。
タルシジオ氏の側近がフォーリャ紙に語ったところによると、タルシジオ氏を2026年の中道右派代表の候補と見ていた企業家たちが、トランプ大統領が9日にブラジルからの輸入品に対する50%課税を発表した際、タルシジオ氏がとった態度を否定的に解釈したという。
タルシジオ知事はその際、「50%課税はルーラ政権の責任」と発言した。だが、企業家たちがタルシジオ氏に望んでいたのは、ルーラ氏とボルソナロ氏の対立に踏み込むことではなく。航空機やオレンジジュースを始め、米国への輸出の3分の1を占める州の知事として、関税問題解決のためにすぐ交渉に動くことだったという。
この流れは、ルーラ政権がボルソナロ氏に対し、「ブラジルを米国に売った裏切り者」というキャンペーンを強く押し出したことで強まってしまった。企業家たちはかねてから2026年の大統領選に関し、タルシジオ氏がボルソナロ氏から独立する姿を求めていたが、この関税騒ぎでそれが加速したようだ。(1)
この状況を鑑み、タルシジオ氏はルーラ氏に対する批判をトーンダウンさせ、50%関税を撤回させるための交渉に動いているが、ちぐはぐさは続いている。
10日、タルシジオ氏はブラジリアに向かってボルソナロ氏と会った。同氏はその際、ボルソナロ氏に対して、これからはサンパウロ州の経済の保護について語るが、ボルソナロ氏への恩赦を求める発言は行わないと予告したという。
ボルソナロ氏の側近によると、前大統領はこの件について何も言わなかったが、かなり動揺した様子だったと言う。そのことは、同日中にSNSに、自分の裁判に影響を与える、トランプ氏の要請に速やかに応えるよう求める投稿を行ったことからも明らかだ。(2)
また、この日、タルシジオ氏は最高裁にも赴いている。一部メディアでは、同氏は最高裁判事に対し、トランプ氏に50%関税をやめるよう説得する目的でボルソナロ氏が米国に渡航できるよう、許可を出すことを求めたという情報が最高裁関係者から流れたと報じていた。
これは、クーデター計画の被告であるボルソナロ氏を国外逃亡させることにもなりうるとして問題視されたが、タルシジオ自身は報じられた目的での最高裁判事との接触や押収されたボルソナロ氏のパスポート返却も含め、報道の内容を否定している。
タルシジオ氏は米国までトランプ大統領に交渉に出向くことも予想されているが、前大統領の側近はこれを快く思っていないという。(3)
ボルソナロ氏は13日になってようやく、SNSサービス「X」上で関税問題に触れ、「関税措置は喜ばしいことではない」と語った。また、前大統領はそれに続けて、「私への恩赦が平和への近道だ」と主張した。(4)
恩赦に関しては、前大統領長男のフラヴィオ上議も11日、関税引き上げを第二次世界大戦に例え、「ブラジルに二つの原爆が落とされるのを防ぐため、恩赦を発表しなければならない」と発言し、物議を醸していた。
だが、ボルソナロ氏の声明は、当初50%関税をルーラ政権の責任だとしようとしていた議会最大の中道勢力セントロンの神経まで逆なでしたとされている。同件は国家主権にも関わるため、ボルソナロ一家の動きに対し、議会内で強い反発が起こっている。(5)