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最高裁長官=トランプ関税に反論書簡=「不正確な理解に基づく」

2025年7月15日

バローゾ最高裁長官が50%関税に関連し、ブラジルの民主主義を擁護する書簡を発表と報じる13日付ヴァロールの記事の一部
バローゾ最高裁長官が50%関税に関連し、ブラジルの民主主義を擁護する書簡を発表と報じる13日付ヴァロールの記事の一部

 最高裁のルイス・ロベルト・バローゾ長官が13日、ドナルド・トランプ米大統領がブラジル製品への50%関税を発表した事に関し、「トランプ大統領の制裁措置は近年のブラジルで起きた事柄に関する不正確な理解に基づいている」という最高裁側の見解を示す書簡を発表した。(1)(2)(3)(4)
 50%関税に関する米大統領の書簡や側近によると、50%関税は、ブラジルとの貿易関係は米国にとって緊急に解決すべき危機との認識だけによるものではなくと、22年大統領選後のクーデター疑惑によるボルソナロ前大統領の裁判は前大統領への迫害であり、米国企業に対する罰金や運営停止措置は検閲行為にあたり、言論・報道の自由を損なうとの認識が背景にある。米大統領は書簡の中で、米国企業への罰金などに関する捜査命令まで出している。(5)
 ブラジルとの貿易関係については、両国の貿易収支は長年、米国側の黒字であり、ブラジルへの関税を他国以上に引き上げる理由は認めがたい上、米国側でも、ブラジル産品の輸入業者やそれを使って製造活動を行う企業、コーヒーや牛肉、鶏卵のように他国からの調達が困難な品に依存している国民への否定的な影響に対する懸念が拡大している。
 また、このような懸念や、実際には存在しない貿易上の危機を理由に高関税を導入しようとする姿勢は米国内でも裁判沙汰に発展するなど、反発が拡大する様相を見せている。(6)
 他方、バローゾ長官は、トランプ氏の名前には触れず、1964年のクーデターなど、過去90年間のブラジルで起きた制度的崩壊の試みの歴史や、ブラジリア空港での爆破テロ未遂事件、最高裁爆破未遂事件、大統領選での選挙不正の虚偽告発、ルーラ/アルキミン次期正副大統領候補(当時)と選挙高裁長官(当時)のアレッシャンドレ・デ・モラエス最高裁判事の暗殺計画を含むクーデター未遂事件を列挙。
 トランプ書簡後の最高裁の見解を示す初書簡では、現在のブラジルには迫害はないと明記。司法は証拠に基づき、対立制度を尊重して正義を執行していると強調。クーデター未遂事件関連の訴えも、「独立し、証拠に基づいて」判断し、「証拠があれば有罪者は責任を問われるが、証拠がなければ無罪となる。これが民主主義の法の支配の仕組みだ」と強調した。
 また、トランプ氏がSNSに関する最高裁の判断を検閲とし、捜査を命じたことについても、最高裁は軍事政権下で制定された旧報道法や選挙期間中のユーモアや政治関係者への批判を制限した選挙規制、無許可の経歴出版を禁じた規制を違憲と宣言して来たと説明。一定の条件下ではソーシャルメディアの運営者にもユーザーの投稿への責任が問われる可能性があるとした6月の判決にも言及し、米国企業が運営しているSNSであっても国内法規に触れる内容の投稿削除やアカウント封鎖命令に従わない時は罰金や運用停止になり得ることも示した。「最高裁は表現の自由、報道の自由、企業の自由、憲法上の価値を守りつつ、欧州の規制より穏やかで穏健な解決策を提示した」と述べている。
 トランプ氏がブラジルの民主主義について「誤った情報」を得ているようだとの見解は、アルキミン副大統領も9日に表明している。(7)
 また、マリア・エリザベス・ロッシャ軍高等裁長官も14日、バローゾ長官の書簡を擁護する発言を行った。(8)


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